その年の冬、アニマルランドにも白い雪がふわふわと降り積もっていました。
ヒヨコ三兄弟――ヒヨコくん、ぴもんくん、ひよたくんは、初めて家族そろって迎えるクリスマスを、今か今かと楽しみにしていました。
普段は海外を飛び回るビジネスマンのヒヨコパパ。
なかなか家にいられないことが多かったけれど、今年は少し長いお休みを取って、家族みんなと一緒に過ごすと決めていたのです。
クリスマスイブの朝、
「ボク、ツリーを飾りつけるピヨ!」とパタパタ張り切るヒヨコくん。
ぴもんくんは、テーブルの上にクッキーやフィッシュアーモンドを並べて、味見ばかり。
「まだ食べちゃダメピヨ!」と、ひよたくんがピシッと注意します。
ヒヨコママは温かいシチューをコトコト煮込みながら、笑顔でみんなの様子を見守ります。
「あなたたち、今日は特別な日だから、仲良く協力するのよ」

ヒヨコパパは少し不器用にツリーのてっぺんに星を取り付けようとして、ぐらぐらと脚立の上でバランスを崩しました。
「パパ、気をつけて!」と三兄弟が一斉に声を上げます。
「ははは、ちょっとドジをしちゃったな」
その姿に家族みんながくすくす笑いました。
夕方になって、外は雪がしんしんと降り積もっていきました。
テーブルの上にはシチュー、焼き立てのパン、クッキー、ぴもんくんのフィッシュアーモンド。おいしい匂いが家じゅうに広がります。
ところが――。
ヒヨコくんとぴもんくんが、余ったクッキーをめぐって言い争いを始めてしまいました。
「それはボクが飾り用に取っておいたピヨ!」
「いや、ボクが一番に見つけたピヨ!」
二人の声がどんどん大きくなり、ひよたくんは「ケンカはやめてピヨ!」と涙目になりました。
ヒヨコママが「二人とも、今日は特別な夜でしょう?」と諭しますが、怒りで頑固になった二羽はなかなか譲りません。
そのとき――。
ヒヨコパパが静かに立ち上がりました。
「ヒヨコくん、ぴもんくん、クッキーなんて、一つの小さなお菓子だ。でも、こうして家族みんなで一緒に過ごせる時間は、何よりも大きな宝物なんだよ」
いつもは遠い国へ仕事に出かけ、なかなか子どもたちのそばにいられなかったヒヨコパパ。
「本当は、みんなの成長を毎日近くで見たかった。だけど、今日はその分を取り返したい。だから、どうか今だけは、ケンカはせずに笑っていてほしいな」
その言葉に、三兄弟ははっとしました。
ヒヨコくんとぴもんくんは顔を見合わせ、しばらく黙っていましたが、やがて二羽同時に「ごめんピヨ」と謝りました。
ひよたくんは「ボク、パパの気持ちわかるピヨ。だから、これからもずっと一緒にいようピヨ」と、涙をこぼしながら言いました。
その瞬間、窓の外で雪がひときわ明るく輝きました。
まるで家族の絆を祝福するかのように、月明かりが雪に反射してきらめいたのです。
ヒヨコママが優しく笑って言いました。
「ほら、神さまもサンタさんも、私たちの仲直りを喜んでいるわ」
三兄弟は小さな翼を広げて、パパとママにぎゅっと抱きつきました。
そのぬくもりは、外の寒さなんて忘れてしまうほど温かくて、心に深く染み込みました。
食卓を囲み、笑い声とおいしいごちそうでお腹も心も満たされた後。
ヒヨコパパはみんなの前で約束しました。
「来年も、再来年も、できるだけ家族と一緒にクリスマスを過ごせるようにする。
それがパパの一番の願いだ」
ヒヨコ三兄弟は声をそろえて言いました。
「ボクたちも、ずっと仲良くするピヨ!」
その夜、家族みんなが布団に入るころ、ヒヨコパパは小さな寝息を立てる三兄弟の顔を眺めながら、胸がいっぱいになりました。
――離れていた時間もあったけれど、家族の絆は決して途切れていない。
むしろ、こうして寄り添うことで、もっと強く結ばれている。
外では静かに雪が降り続き、アニマルランドの夜空に光る星は、いつまでも家族を照らしていました。

✨おわり✨
