ある日の午後、ヒヨコ三兄弟は、森の広場でボール遊びをしていました。
青い空に、ぽっかり白い雲。みんな笑顔で転がしていたそのとき――
「それっ!」とヒヨコくんが勢いよく投げたボールが、
ひよたくんの胸の辺りに“ぽすん”と当たってしまいました。
「……いたいピヨ。」
ひよたくんは一瞬、目を伏せました。
胸の奥に、ちょっとした痛みと、ぐらりとした感情の波が立ちました。
――なんで強く投げたの?
――ちゃんと気をつけてほしかったピヨ。
でも、すぐにその波を見つめて、ひよたくんは深呼吸をしました。
「だいじょうぶピヨ。きっと手が滑っただけピヨ。」
その声は、やさしく穏やか。
内側で小さな嵐が吹いていても、
外に見せず、静けさをまとったひよたくんの姿に、ぴもんくんは思わず「すごいピヨ……」とつぶやきました。
あとでヒヨコくんは気づいて、
「ごめんピヨ!」とあやまりました。
ひよたくんはにっこり笑って言いました。
「びっくりしたけど、もう大丈夫ピヨ。おたがい気をつけようピヨね。」
その笑顔に、森の風がやさしく吹き抜けていきました。
心の嵐は、もうすっかりおさまっていました。
📝ことばのおくりもの
「内なる嵐を鎮め、平静を装う。これぞ成熟の証。」
心の中に怒りや不安が生まれるのは、だれにでもあることです。
けれど、その波をすぐに外へぶつけず、まず自分の中で静めること。
それは弱さを隠すためではなく、「強さを選ぶ」こと。
静けさの中にこそ、本当の成熟が宿ります。
