ある朝、台所からいい匂いがしていました。
お鍋の中では、ヒヨコママの愛情がことこと、ゆっくり煮えています。
その音につられて、
ヒヨコくんとぴもんくん、ひよたくんは、
テーブルのまわりをてちてち、てちてち。
楽しくて、うれしくて、足が止まりません。
「こらこら、走らないの」
ヒヨコママの声は、決してきつくありません。
でも――その声が届いた、その瞬間。
ガシャーン!
床に落ちたのは、大事なお皿。
高く響いた音に、
部屋の時間が、ぴたりと止まりました。
割れたかけら。
ひんやりした床。
三兄弟の胸の奥が、ぎゅっと縮みます。
ヒヨコママは、すぐには怒りませんでした。
三兄弟をまっすぐ見て、
少しだけ声を低くして、静かに言いました。
「さっき、走らないって言ったわよね?」
ヒヨコくんの頭の中で、言葉がぐるぐる回ります。
(でも…)(だって…)
くちばしが、もごもご動きました。
「だって、ぴもんくんが――」
ぴもんくんも、あわてて首をすくめます。
「ボクはお腹が空いてただけで――」
そのとき。
ひよたくんが、一歩前に出ました。
小さな体。
でも、逃げない目。
胸のドキドキをぎゅっと抱えたまま、
小さく、でもはっきり言いました。
「……はい。ごめんなさいピヨ」
その声は震えていましたが、
まっすぐでした。
ヒヨコくんは、その背中を見て、
自分の胸をぽん、と叩きました。
「……はい。ボクが悪かったピヨ」
ぴもんくんも、床を見つめて、
ぽつり。
「はい……ごめんなさいピヨ」
ヒヨコママは、すぐには何も言いません。
割れたお皿を拾いながら、
三兄弟の言葉が、心に落ちていくのを待っていました。
そして、やさしく、静かに言いました。
「言い訳をしなかったの、えらいわ。
『はい』って言葉はね、
怒りを大きくしない魔法なのよ」
三兄弟は、こくこく、こくこく。
さっきより、少し背中がまっすぐです。
床をふいて、後片づけをして、
みんなで食べたその日のごはんは――
叱られたあとのごはんなのに、
いつもより、少しだけ、
胸の奥まであったかい味がしました。
📝 ことばのおくりもの
叱られたときの「はい」は、
負ける言葉でも、我慢する言葉でもありません。
言い訳や自己弁護を手放したとき、
心は守りを解き、素直な場所に戻れます。
短く、まっすぐに。
「はい」
その一言が、
空気をやわらげ、
関係をこわさず、
次の一歩へとつないでくれます。
※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)
あさのキッチンで、いいにおいがふわ〜っとしてるピヨ🐣
ヒヨコママが、おなべをことことしてるピヨ〜✨
ヒヨコくんとぴもんくん、ひよたくんは、
てちてち集まってきて、ドキドキしながら並んでるピヨ。
まえには、われちゃったおさらがコロコロ…。
ちょっぴりしょんぼりしながら、
「……はい、ごめんなさいピヨ」って言ってるピヨ。
ヒヨコママは、やさしいおめめで見つめながら、
そっとおかたづけしてるピヨね。
おへやはちょっぴりしーんとしてるけど、
こころの中は、あったかくなってきてるピヨ〜🌼

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