[ひよこものがたり]特別編「耳なしヒヨコくん」

むかしむかし、アニマルランドのはずれに、

夜になると音だけがよく響く、しずかなお寺がありました。

そこには、目が見えないヒヨコくんが住んでいました。

ヒヨコくんは景色を見ることはできませんでしたが、

音を聞くことと、歌うことが、だいすきでした。

太鼓のぽん、という低い音。

風が葉っぱをゆらす、さわさわという音。

だれかが近づくときの、足音。

「音は、ボクの目ピヨ」

ヒヨコくんは、そう言って、毎晩太鼓をたたき、

物語のうたを歌っていました。

昼間になると、

ぴもんくんが、お寺まで遊びに来ます。

ぽてぽて歩いて、フィッシュアーモンドをかじりながら。

「ヒヨコくんのうた、

なんだかおなかいっぱいになるピヨ〜」

「えへへ、ぴもんくん、ありがとうピヨ」

そんな、のんびりした日々が続いていました。

イラスト説明ピヨ!お寺の前で、 ヒヨコくんが目をとじて、ぽんぽん太鼓をたたいているピヨ🥁 となりには、ぴもんくんがいて、 フィッシュアーモンドをうれしそうに持っているピヨ🐣 ひよたくんも、 そっとやさしく見守っているピヨ💗 お月さまと音符が夜の森に広がる、 しずかであたたかいイラストだピヨ🌙🎶

――ある夜のこと。

ひんやりした風といっしょに、

いつもとちがう足音が聞こえてきました。

……すう。……すう。

「こんばんはピヨ。お客さんピヨ?」

ヒヨコくんがたずねると、

低く、静かな声が返ってきました。

「そのとおりだ。

今夜も、そのうたを聞かせてほしい」

ヒヨコくんは少しだけ首をかしげました。

でも、悪い気はしません。

「当たり前ピヨ。どうぞ、聞いてピヨ!」

それから毎晩、

黒いお客さまたちはやってきました。

ヒヨコくんは、見えない目の代わりに、

耳と心で気配を感じながら、

一生けんめい歌いました。

イラスト説明ピヨ!よるのじんじゃで、ヒヨコくんがたいこをポコポコたたいてごきげんにうたってるピヨ〜♪ きらきらおんぷと、ふしぎなかげたちがしずかにきいてるピヨ✨

次の日、ぴもんくんが、

なんだか不安そうに言いました。

「ねえヒヨコくん……

夜になると、お寺、すごく寒いピヨ……

それに、知らないにおいがするピヨ……」

「そうピヨ?

でも、ちゃんと聞いてくれるお客さんピヨ」

それを、そっと見守っていたのが、ひよたくんです。

ある夜、ひよたくんは、

お寺のすみにたまった冷たい気配を見て、

はっとしました。

「……このお客さん、

生きてる人じゃないピヨ」

足音が、地面にちゃんと触れていない。

息の音もしない。

「ヒヨコくん、あのお客さん……

おばけピヨ……」

ぴもんくんも、ぎゅっと体を丸めます。

「やっぱりピヨ……

ボク、こわいピヨ……」

でもヒヨコくんは、にこっと笑います。

「そうピヨ?

でもね、ちゃんと聞いてくれるピヨ。

ボクのうた」

それでも、

ひよたくんとぴもんくんの胸は、ざわざわしました。

そこで、夜が来る前、

ひよたくんはヒヨコくんの体じゅうに、

まもりのもじを書きました。

あたま、ほっぺ、くちばし、あし。

見えない目のまぶたにも、そっと。

「これでだいじょうぶピヨ。

もじのあるところは、取られないピヨ」

ぴもんくんも、

フィッシュアーモンドをぎゅっと持って、祈ります。

「ヒヨコくん、だいじょうぶピヨ……」

その夜。

また、おばけのお客さまたちが現れました。

ヒヨコくんが歌い終わると、

ひそひそ、ひそひそ、声が聞こえます。

「……おかしい」

「ヒヨコくんが、見当たらぬ」

そして、だれかが言いました。

「……耳も、ない……」

しん、と静かになりました。

ヒヨコくんは、きょとん。

「耳ピヨ?

ボク、最初から耳、ないピヨ?」

その瞬間、

冷たい気配は、ふわっと消え、

夜の音だけが戻ってきました。

朝。

ぴもんくんが、真っ先にかけ寄ります。

「ヒヨコくん!

だいじょうぶだったピヨ〜!」

ひよたくんも、そっと聞きました。

「ヒヨコくん……

こわくなかったピヨ?」

ヒヨコくんは、太鼓をぽん、とたたいて言いました。

「ううん。

見えなくても、聞こえなくても、

ボクのうたは、ここにあるピヨ」

そして、にっこり。

「それにね、

耳を取られると思いきや、

ヒヨコには、取られる耳がなかったピヨ!

当たり前ピヨ!」

お寺には、今日もやさしい音が響いています。

ぴもんくんの笑い声も、

ひよたくんのほっとした息も、

ぜんぶまじって。

見えなくても、

だいじなものは、ちゃんと心で見えるのでした。

イラスト説明ピヨ!よるのいけで、みんなではなびを見てるピヨ✨ キラキラひかって、ほっこりたのしい夜ピヨ🎆

※アイキャッチの説明

お寺の前で、

耳なしヒヨコくんが目をとじて、ぽん…ぽん…と太鼓をたたいているピヨ。

となりでは、フィッシュアーモンドを持ったぴもんくんと、

ピンクのスタイのひよたくんが、そっと見守っているピヨ。

夜の森に、やさしい音とうたが広がって、

ちょっぴりふしぎで、あたたかい時間が流れているピヨ。

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