[ひよこものがたり]ことばのおくりもの第59話「ごちそうさまは、上でも下でもなく」

アニマルランドの駅前に、

小さくてあたたかいごはん屋さんがありました。

白いのれんが、風にゆらゆら揺れています。

その日、ヒヨコ三兄弟はヒヨコママと一緒に、

はじめてそのお店に入りました。

「いらっしゃいませ」

カウンターの向こうで、ラジッピが元気よくあいさつをします。

エプロン姿で、てきぱきとお皿を運ぶ姿は、とても楽しそうでした。

料理が運ばれてきて、

三兄弟はそろって言います。

「いただきます、ピヨ!」

もぐもぐ、はふはふ。

どれもおいしくて、自然と笑顔になります。

食べ終わり、ヒヨコくんが顔を上げて言いました。

「ごちそうさまでした、ピヨ!」

すると、となりの席から、ひそひそ声が聞こえてきました。

「え、店で“ごちそうさま”って言うの?

なんか変じゃない?」

ヒヨコくんは、少し胸がきゅっとなりました。

ぴもんくんはスプーンを止め、

ひよたくんは、ぎゅっとスタイを握ります。

そのとき、ラジッピがにこっと笑って言いました。

「ありがとうございます。

その一言で、今日の疲れがふっと軽くなるんです」

ヒヨコママは、静かに席を立ち、

三兄弟の目線に合わせて話します。

「お店の人とお客さんは、

どちらが上でも、どちらが下でもないの。

ごはんを作る人と、いただく人。

同じ時間を分け合っている対等な存在よ」

ヒヨコくんは、はっとしました。

「感謝するのは、えらいとかじゃないピヨ。

ありがとうって、思ったから言うだけピヨ」

ラジッピは、深くうなずきました。

「そうですね。

私は料理を出す側、みなさんは食べる側。

でも、気持ちは同じ高さにあります」

帰り際、三兄弟はもう一度、

のれんの前で言いました。

「ごちそうさまでした、ピヨ!」

その声は小さくても、

お店の中をやさしく満たしていきました。

📝 ことばのおくりもの

飲食店での「ごちそうさま」を

笑ったり、馬鹿にしたりするのは、

感謝の気持ちを忘れてしまった行いです。

お金を払っているから偉いのではありません。

料理を作る人も、運ぶ人も、食べる人も、

同じ場所で同じ時間を共有する対等な存在です。

「ごちそうさま」は、

立場を決める言葉ではなく、

心の高さをそろえる言葉。

その一言が言える人は、

人としての品を、ちゃんと持っています。

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