[ひよこものがたり]ことばのおくりもの第60話「ヒヨコくんの「むすっ」ところりん」

ある朝、アニマルランドはぽかぽかいい天気。

ヒヨコくん、ぴもんくん、ひよたくんは、並んでお散歩に出かけました。

ところが途中、ヒヨコくんは道ばたの小石につまずいて、ころん。

ケガはなかったけれど、胸の中に「むすっ」が残りました。

「ついてないピヨ……」

ヒヨコくんはくちばしを尖らせ、そのまま無言で歩き出します。

ぴもんくんは、横をちらり。

いつもならおしゃべりなのに、今日は声をかけるのをためらいました。

(今、話しかけたら、怒らせちゃうかもピヨ……)

ひよたくんも、少し歩幅を小さくします。

ヒヨコくんの機嫌をうかがいながら、空気がピンと張りつめていくのを感じていました。

鳥のさえずりが聞こえても、

きれいなお花が咲いていても、

誰も「きれいだね」と言いません。

ぴもんくんはポケットのフィッシュアーモンドに手を伸ばしかけて、

そっと引っ込めました。

(今は、半分こって言わないほうがいいピヨね……)

ひよたくんは、何か楽しい話をしようとして、

でも言葉を飲み込みました。

(ボクがしゃべると、ヒヨコくん、余計にイライラしちゃうかもピヨ)

三人の間に、静かな重たい空気が流れます。

そのとき、ヒヨコくんはふと気づきました。

後ろを歩く二人が、いつもより静かで、

いつもより遠慮していることに。

立ち止まり、振り返ります。

ぴもんくんは少し困った顔。

ひよたくんも、気を遣った小さな笑顔。

「……あれ?」

ヒヨコくんの胸が、ちくっとしました。

ひよたくんが、勇気を出して言います。

「ヒヨコくん、さっき転んでびっくりしたよねピヨ。

ちょっと深呼吸してみない?」

ヒヨコくんは、はっとして、ふう……と息を吐きました。

胸の中にたまっていた「むすっ」が、少しずつほどけていきます。

道ばたには、黄色いお花。

元気そうに揺れていました。

「……ボク、不機嫌な顔してたピヨね」

小さく言うと、ぴもんくんとひよたくんが、ほっとしたように笑います。

「ボクたち、ちょっとドキドキしてたピヨ」

「ヒヨコくんが元気ないと、心配になるピヨ」

ヒヨコくんは、胸の奥があたたかくなりました。

自分の機嫌が、知らないうちに大切な二人に影を落としていたこと。

「ごめんピヨ。ボクの機嫌は、ボクで直すピヨ」

そう言って、もう一度深呼吸。

今度はちゃんと、笑いました。

ぴもんくんはフィッシュアーモンドを差し出し、

「半分こ、復活ピヨ!」

ひよたくんも、にっこりうなずきます。

三人の足取りは、また軽くなり、

アニマルランドの道に、やさしい風が戻ってきました。

📝ことばのおくりもの

自分が不機嫌なとき、

いちばん困っているのは、

実はそばにいる大切な人かもしれません。

気を遣わせてしまう空気、

言葉を飲み込ませてしまう沈黙。

だからこそ、

自分の機嫌は、自分で取る。

それは強さでも我慢でもなく、

まわりへの思いやりと、

自分を大切にするやさしさです。

※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)

🐥💛ピヨピヨ〜!

ヒヨコくんが「むすっ」としながら歩いているピヨ〜。
赤いスカーフがふわっとなびいているけど、お顔はちょっぴりご機嫌ななめピヨ。

後ろでは、ぴもんくんとひよたくんが心配そうに見守っているピヨ〜。
ぽかぽかのお花道なのに、三兄弟のまわりだけ少しだけドキドキな空気が流れているピヨ。🌼🐥📚🐟💛

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