[ひよこものがたり]ことばのおくりもの第74話「にじのてっぺんと、あしもとのいっぽ」

ある日のこと。

森の丘の上に、きれいな虹がかかっていました。

「うわああああ!
あのにじのてっぺんまで行きたいピヨ!!」

ヒヨコくんが、目をキラキラさせて叫びました。

「きっと、すっごい景色が見えるピヨ〜✨」

ぴもんくんも、フィッシュアーモンドを握りしめながら、うっとりしています。

ひよたくんも虹を見上げました。

でも、ちょっとだけ首をかしげます。

「でも……あそこって、すごく遠いピヨ?」

「だいじょうぶピヨ!
気合いがあれば行けるピヨ!」

ヒヨコくんは、もう走り出していました。

「待ってピヨ〜!」

ぴもんくんとひよたくんも、あとを追いかけます。

てちてち。
てちてち。

丘をひとつ越えました。

小川をひとつ渡りました。

坂道をひとつのぼりました。

てちてち。
てちてち。

「……まだピヨ?」

ぴもんくんが、その場にぺたんと座り込みました。

「にじ、ぜんぜん近づいてないピヨ……」

ヒヨコくんも、足を止めました。

さっき見た虹は、まだずっと遠くにあります。

「おかしいピヨ……」

ヒヨコくんは、虹を見つめました。

「ボク、こんなに行きたいって思ってるのに……」

そのとき、ひよたくんが静かに言いました。

「ヒヨコくん、ぴもんくん。

『行きたい』って思うのは、とっても素敵なことピヨ。

でもね……」

ひよたくんは、自分の小さな足を見ました。

「虹ばっかり見てたら、
今どこにいるのか分からなくなっちゃうピヨ」

「……?」

ヒヨコくんとぴもんくんが、ひよたくんを見つめます。

「ボクたち、どれくらい歩くか、
どんな道を通るか、ぜんぜん考えてなかったピヨ」

二人は、ハッとしました。

ひよたくんは続けます。

「虹は遠いピヨ。
でも、今いる場所から一歩ずつ歩けばいいピヨ」

「一歩ずつ……?」

「そうピヨ。

『今日は、あの丘まで行く』

『次は、あの大きな木まで行く』

って、小さく決めていけばいいピヨ」

ヒヨコくんは、地面を見ました。

ぴもんくんも、自分の足を見ました。

すると、そこには――

さっきまで気づかなかった、三人の足あとがありました。

てちてち。
てちてち。

「……あれ?」

ヒヨコくんが目を丸くします。

「ボクたち、ちゃんと進んでたピヨ!」

「ほんとピヨ!」

ぴもんくんも、自分の足あとを見つめます。

「ボク、にじのことばっかり見てたピヨ。

だから、ここまで歩いてきたことに気づかなかったピヨ」

ひよたくんは、にっこり笑いました。

「夢を見るときは、空を見上げていいピヨ。

でも、歩くときは足元を見るピヨ」

ヒヨコくんは、もう一度虹を見上げました。

そして、今度は自分の足元を見ました。

「よーし!」

ヒヨコくんが、元気よく言いました。

「今日は、あの大きな木まで行くピヨ!」

「そこまで行けたら、おやつタイムぴよ!」

ぴもんくんは、もうフィッシュアーモンドを見つめています。

「うん。

まずは、いっぽピヨ」

三人は並んで歩き始めました。

てちてち。
てちてち。
てちてち。

虹は、まだ遠いままです。

でも三人の足どりは、さっきよりずっと力強くなっていました。

そして――

一歩。

また一歩。

三人は、ゆっくりと前へ進んでいきました。

🌈

📝 ことばのおくりもの

大きな夢を見ることは、とても素敵なことです。

「あんなところに行きたい」

「こんな自分になりたい」

そんな思いは、心を前に向けてくれます。

でも、夢ばかりを見ていると、
今、自分がどこにいるのかを忘れてしまうことがあります。

大切なのは、

今の自分を知ること。

今いる場所を受け入れること。

そして、今日できる小さな一歩を踏み出すこと。

虹は、遠くにあっていい。

大きな夢も、遠くにあっていい。

ただ、夢を見るときは空を見上げて、
歩くときは、足元を見る。

一歩、また一歩。

そうやって歩いていけば、
いつか振り返ったとき、

「こんなところまで来たんだ」

と思える日が、きっとやってきます。

夢は大きく。
一歩は小さく。

その一歩を、今日から始めてみよう。

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