ある日のこと。
森の丘の上に、きれいな虹がかかっていました。
「うわああああ!
あのにじのてっぺんまで行きたいピヨ!!」
ヒヨコくんが、目をキラキラさせて叫びました。
「きっと、すっごい景色が見えるピヨ〜✨」
ぴもんくんも、フィッシュアーモンドを握りしめながら、うっとりしています。
ひよたくんも虹を見上げました。
でも、ちょっとだけ首をかしげます。
「でも……あそこって、すごく遠いピヨ?」
「だいじょうぶピヨ!
気合いがあれば行けるピヨ!」
ヒヨコくんは、もう走り出していました。
「待ってピヨ〜!」
ぴもんくんとひよたくんも、あとを追いかけます。
てちてち。
てちてち。
丘をひとつ越えました。
小川をひとつ渡りました。
坂道をひとつのぼりました。
てちてち。
てちてち。
「……まだピヨ?」
ぴもんくんが、その場にぺたんと座り込みました。
「にじ、ぜんぜん近づいてないピヨ……」
ヒヨコくんも、足を止めました。
さっき見た虹は、まだずっと遠くにあります。
「おかしいピヨ……」
ヒヨコくんは、虹を見つめました。
「ボク、こんなに行きたいって思ってるのに……」
そのとき、ひよたくんが静かに言いました。
「ヒヨコくん、ぴもんくん。
『行きたい』って思うのは、とっても素敵なことピヨ。
でもね……」
ひよたくんは、自分の小さな足を見ました。
「虹ばっかり見てたら、
今どこにいるのか分からなくなっちゃうピヨ」
「……?」
ヒヨコくんとぴもんくんが、ひよたくんを見つめます。
「ボクたち、どれくらい歩くか、
どんな道を通るか、ぜんぜん考えてなかったピヨ」
二人は、ハッとしました。
ひよたくんは続けます。
「虹は遠いピヨ。
でも、今いる場所から一歩ずつ歩けばいいピヨ」
「一歩ずつ……?」
「そうピヨ。
『今日は、あの丘まで行く』
『次は、あの大きな木まで行く』
って、小さく決めていけばいいピヨ」
ヒヨコくんは、地面を見ました。
ぴもんくんも、自分の足を見ました。
すると、そこには――
さっきまで気づかなかった、三人の足あとがありました。
てちてち。
てちてち。
「……あれ?」
ヒヨコくんが目を丸くします。
「ボクたち、ちゃんと進んでたピヨ!」
「ほんとピヨ!」
ぴもんくんも、自分の足あとを見つめます。
「ボク、にじのことばっかり見てたピヨ。
だから、ここまで歩いてきたことに気づかなかったピヨ」
ひよたくんは、にっこり笑いました。
「夢を見るときは、空を見上げていいピヨ。
でも、歩くときは足元を見るピヨ」
ヒヨコくんは、もう一度虹を見上げました。
そして、今度は自分の足元を見ました。
「よーし!」
ヒヨコくんが、元気よく言いました。
「今日は、あの大きな木まで行くピヨ!」
「そこまで行けたら、おやつタイムぴよ!」
ぴもんくんは、もうフィッシュアーモンドを見つめています。
「うん。
まずは、いっぽピヨ」
三人は並んで歩き始めました。
てちてち。
てちてち。
てちてち。
虹は、まだ遠いままです。
でも三人の足どりは、さっきよりずっと力強くなっていました。
そして――
一歩。
また一歩。
三人は、ゆっくりと前へ進んでいきました。
🌈
📝 ことばのおくりもの
大きな夢を見ることは、とても素敵なことです。
「あんなところに行きたい」
「こんな自分になりたい」
そんな思いは、心を前に向けてくれます。
でも、夢ばかりを見ていると、
今、自分がどこにいるのかを忘れてしまうことがあります。
大切なのは、
今の自分を知ること。
今いる場所を受け入れること。
そして、今日できる小さな一歩を踏み出すこと。
虹は、遠くにあっていい。
大きな夢も、遠くにあっていい。
ただ、夢を見るときは空を見上げて、
歩くときは、足元を見る。
一歩、また一歩。
そうやって歩いていけば、
いつか振り返ったとき、
「こんなところまで来たんだ」
と思える日が、きっとやってきます。
夢は大きく。
一歩は小さく。
その一歩を、今日から始めてみよう。

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