ある日の午後。
アニマルランドは、ハロウィンの飾りでいっぱいでした。
おうちの玄関には、にっこり笑ったカボチャ。
窓には、かわいいオバケ。
そして、ヒヨコ三兄弟のおうちでも、なにやら楽しそうな声が聞こえてきます。
「ママ! ボク、早くオバケになりたいピヨ!」
ヒヨコくんが、ぴょんぴょん跳ねています。
「ボクは、お菓子をいっぱいもらいたいぴよ〜」
ぴもんくんは、もうお腹をなでています。
「今日は仮装して、お友達のおうちを回るんだよね、ピヨ」
ひよたくんも、わくわくした様子です。
「ふふっ。じゃあ、みんなの衣装を着てみましょうか」
ヒヨコママが、三つの衣装を持ってきました。
ヒヨコくんは、黒いマントを羽織った小さなドラキュラ。

ぴもんくんは、まんまるカボチャの衣装。

ひよたくんは、白い布をふんわりかぶった、かわいいオバケです。

「ガオー! ボク、こわいドラキュラピヨ!」
ヒヨコくんが、マントを広げました。
「ドラキュラは、ガオーじゃないと思うピヨ」
ひよたくんが、くすっと笑います。
「ボクはカボチャぴよ〜。食べられないように気をつけるぴよ〜」
ぴもんくんは、ぽんぽこお腹を揺らしました。
「まあ! みんな、とってもかわいいわね」
ヒヨコママは、にっこり。
「それじゃあ、お菓子をもらうときの合言葉、覚えている?」
「もちろんピヨ!」
ヒヨコくんが胸を張ります。
「トリック・オア・トリート! ピヨ!」
「そうそう! 上手ね」
ところが……。
いざ、お出かけとなると、三兄弟はすっかり舞い上がってしまいました。
最初に向かったのは、ベルちゃんのおうちです。
ピンポーン!
「はーい!」
ピンクのエプロンをつけたベルちゃんが、扉を開けました。
「わあ! みんな、かわいい仮装ね!」
「えへへ! それじゃあ、いくピヨ!」
ヒヨコくんは、マントをばさっと広げて叫びました。
「トリック・オア・トマト! ピヨ!」
……しーん。
「……トマト?」
ベルちゃんが、きょとん。
「ち、違うピヨ! トマトじゃなくて……トリートピヨ!」
ヒヨコくんは、恥ずかしそうにほっぺを赤くしました。
「あはは! トマトもおいしいけど、今日はクッキーをどうぞ!」
ベルちゃんは、カボチャの形をしたクッキーを三つ渡してくれました。
「ありがとうピヨ!」
三兄弟は、にこにこ笑って次のおうちへ向かいます。
次にやってきたのは、リンちゃんのおうち。
ピンポーン!
「いらっしゃい。あ、ハロウィンだね」
リンちゃんが、にっこり迎えてくれました。
「次はボクが言うぴよ〜!」
ぴもんくんが、一歩前に出ました。
そして、お腹をぽんっとたたいて……。
「トリック・オア・プリン! ぴよ〜!」
「……プリン?」
リンちゃんが目をぱちぱち。
「ぴもんくん、それじゃあプリンをお願いしてるみたいピヨ」
ひよたくんが、優しく教えます。
「えっ? プリンじゃないぴよ?」
ぴもんくんは、首をかしげました。
「ボク、プリンも大好きぴよ〜」
「ふふっ。ぴもんくんらしいね」
リンちゃんは笑いながら、キャンディーを三つ渡してくれました。
「プリンじゃなくても、うれしいぴよ〜!」
ぴもんくんは、大切そうにキャンディーをしまいました。
そして最後は、すーさんのおうちです。
ピンポーン!
「おおっ! かわいいオバケたちが来たぞう!」
すーさんが、大きな体をかがめて迎えてくれました。
「今度はボクの番ピヨ」
ひよたくんが、ちょこんと前に出ました。
「ボク、ちゃんと言えるように練習してきたピヨ」
ひよたくんは、すうっと息を吸って……。
「トリック・オア・おふとん! ピヨ!」
「……おふとん?」
すーさんは、目を丸くしました。
「あっ……!」
ひよたくんは、自分の白いオバケ衣装を見下ろしました。
「おふとんみたいな格好だから、間違えちゃったピヨ……」
すると、すーさんは大きな声で笑いました。
「わっはっは! それなら、オレがふかふかのおふとんを用意しなくちゃいけないぞう!」
「えへへ……お菓子でお願いするピヨ」
ひよたくんも、照れくさそうに笑いました。
すーさんは、三兄弟にチョコレートを渡してくれました。
「ほら、かわいいオバケたち! ハッピーハロウィンだぞう!」
「ありがとうピヨ!」
「ありがとうぴよ〜!」
「ありがとうピヨ!」
三兄弟は、元気いっぱいお礼を言いました。
帰り道。
三兄弟は、もらったお菓子を見せ合いながら歩いていました。
「ボク、トマトって言っちゃったピヨ!」
「ボクはプリンぴよ〜!」
「ボクは、おふとんピヨ」
三兄弟は顔を見合わせて……。
「あはははは!」
みんなで大笑いしました。
「でも、みんな笑ってくれたピヨ!」
「お菓子もいっぱいもらえたぴよ〜!」
「言い間違えちゃったけど、楽しかったね、ピヨ」
やがて、おうちに帰ると、ヒヨコママが待っていました。
「おかえりなさい! どうだった?」
「とーっても楽しかったピヨ!」
ヒヨコくんが、マントをひらひらさせます。
「でもね、ママ。ボクたち、みんな合言葉を間違えちゃったピヨ!」
「まあ、そうなの?」
ヒヨコママが笑うと、ひよたくんが言いました。
「でも、みんな優しく笑ってくれたピヨ」
「そうね。きっと、みんなの楽しそうな気持ちが伝わったのね」
すると、ぴもんくんが、何かを思いついたように目を輝かせました。
「ねえねえ、ママ!」
「なあに?」
「トリック・オア・おかわり! ぴよ〜!」
「えっ?」
「お菓子、もっと食べたいぴよ〜!」
その瞬間。
「それは、合言葉じゃないピヨー!」
ヒヨコくんとひよたくんの声が、ぴったり重なりました。
「あはははは!」
ヒヨコママも、思わず大笑い。
こうして、ヒヨコ三兄弟のハロウィンは、かわいい言い間違いと、たくさんの笑顔でいっぱいになったのでした。
そして、その夜。
お布団に入ったぴもんくんが、むにゃむにゃと寝言を言いました。
「トリック・オア……プリンのおかわり……ぴよ〜……」
隣で眠っていたヒヨコくんが、寝ぼけながらつぶやきました。
「……トマトも忘れないでピヨ……」
ひよたくんは、ふたりの寝言を聞きながら、くすっと笑いました。
「……ハッピーハロウィン、ピヨ」
おやすみなさい。
※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)
ハロウィンの夜、ヒヨコ三兄弟が仮装してお菓子をもらいに出かけている、温かみのある絵本風のイラストです。
左のぴもんくんは、頭にカボチャのヘタを模した帽子をかぶり、体にはオレンジ色の大きなカボチャの衣装を着ています。丸いお腹の部分には、黒い目と口が描かれています。
真ん中のヒヨコくんは、赤い裏地のついた黒いマントを羽織り、首元に赤いリボンをつけたドラキュラ姿です。マントの襟は大きく立ち上がっています。
右のひよたくんは、頭から足元まで白い布をふんわりかぶったオバケ姿です。顔の部分だけ丸く開いていて、かわいい黄色い顔がのぞいています。
三兄弟は、カボチャ型のお菓子入れを持ってにっこり笑っています。
背景には大きな満月と星空、明かりのともる家々が描かれ、上部には「ヒヨコ三兄弟のハロウィンピヨ!」と書かれています。

Comments are closed