夕暮れの森は、少し肌寒く、木々の影も長くのびています。
ヒヨコ三兄弟とチュンにいちゃんは、星の石を大事に持って、“光る木”をさがしていました。
「…あっ、あれ…見てピヨ」
ひよたくんが、そっと指をさしました。
そこには、ぽおっとやさしい光をまとった大きな木が立っていました。
幹がほんのり白く光り、枝の先には光る葉っぱがふるふるとゆれて――まるで、木が呼吸しているようです。
「わあ……きれいピヨ…」
「ほんとうに光ってるなんて……なんか、夢みたいピヨ」
みんなでそっと木の下に近づいて、星の石を木の根もとにそっと置きました。
その瞬間、木の中から、小さな木箱が「カチリ」と音を立てて現れました。
中には、小さな紙が一枚だけ入っていました。
「“ほんとうの宝は、いっしょにすごした時間と、心のなかにあるピヨ”……」
ぴもんくんが声に出して読みました。
「……なんだか、深いピヨ」
「ちょっと期待してたけど…金のコインとかじゃないんだピヨね」
でもそのとき――
チュンにいちゃんが、ふっと笑いました。
「ボクね……ほんとは、この旅で一番大事にしたかったのは、“みんなといっしょにすごす時間”だったんだピヨ」
三兄弟が顔を上げると、チュンにいちゃんの目が、少しだけうるんでいました。
「最近ね、みんながどんどん大きくなってて、このままはなれてしまうんじゃないかってちょっぴりさびしかったピヨ。でも、今日こうして、またいっしょに冒険できて……本当にうれしかったピヨ」
ヒヨコくんが、そっと言いました。
「ボクたちも、チュンにいちゃんと会えて、すっごくうれしかったピヨ」
「プレゼントも嬉しかったけど……いっしょに森を歩いて、木を見つけて、おやつ食べて……全部が宝物ピヨ」
ぴもんくんも、ひよたくんも、うんうんとうなずいて、チュンにいちゃんにぎゅーっと抱きつきました。
「チュンにいちゃん、大好きピヨ!」
「またいっしょに冒険しようピヨ!」
「いつでも遊びにきてピヨ!」
チュンにいちゃんは、三兄弟をやさしくぎゅっとだきしめながら、こう言いました。
「もちろんピヨ。いつでも、どこでも、みんなのチュンにいちゃんピヨ!」
そして、やさしく光る木の下で――
4人はずっと笑いながら、森の風を感じていました。
それが、なによりもまばゆい“宝物の時間”だったのです。
おしまい
※タイトルのイラストには、ふわりと白く光る大木がそびえ立っており、その前に、ヒヨコたちが4羽並んで立っています。左から、いたずらっぽい表情のヒヨコくん、ふっくらしたお腹のぴもんくん、スタイをつけてしっかり者のひよたくん、そして少し大きくて頼れそうなチュン兄ちゃんがいます。