[ひよこものがたり]言葉の贈り物編第30話「にげない友情の形」

ある日の午後。

森の木々がやわらかい風にゆれて、木漏れ日がきらきらと地面に落ちていました。

ヒヨコくんとぴもんくんは、ベルちゃんと並んで遊んでいました。

ヒヨコくんが思いついた遊びを言えば、ぴもんくんは「それ、楽しそうピヨ!」とすぐに乗ります。

ぴもんくんが転びそうになると、ヒヨコくんは当たり前のように羽を伸ばして支えました。

「ヒヨコくんとぴもんくんって、本当に仲いいね」

ベルちゃんがくすっと笑うと、

「当たり前ピヨ!」

「ずっと一緒ピヨ!」

2人は声をそろえて答えました。

――だからこそ。

ほんの小さな行き違いが、思いがけず胸に引っかかってしまったのです。

「ボク、悪くないピヨ!」

ヒヨコくんの声は、いつもより少し強く響きました。

「ボクだって、そんなつもりじゃなかったピヨ!」

ぴもんくんも、珍しくむくれた顔をします。

さっきまで同じ方向を見ていた2羽が、背中合わせになるように黙りこみました。

ベルちゃんは困ったように耳をぴょこんと立てます。

「もう…やめようよ。こんな気持ちで遊ぶの、やだよ」

でもヒヨコくんは、ふいっと顔をそらしました。

さっきまで一番近くにいたはずのぴもんくんを、見ないようにして。

「じゃあ、もう別々に遊べばいいピヨ」

その言葉に、森の空気が少し冷たくなりました。

ぴもんくんはしょんぼりして、持っていたフィッシュアーモンドをぽとりと落とします。

大好きなおやつなのに、拾う気にもなれません。

そのとき、少し離れた木の陰から、ひよたくんがそっと出てきました。

「おにいちゃんたち……。仲直り、しないのピヨ?」

ヒヨコくんは黙っていました。

けれど、ひよたくんのまっすぐな目を見た瞬間、胸がちくりとしました。

(ボク、ただ怒ったまま逃げたかっただけピヨ……)

少し考えてから、ヒヨコくんは小さな声で言いました。

「ごめんピヨ。ボク、嫌な気持ちから逃げちゃってたピヨ」

ぴもんくんは、ふわっと笑って、ヒヨコくんの羽をそっと握りました。

「ボクも、ちゃんと話せばよかったピヨ」

森にやさしい風が吹き、3羽のあいだに、またあたたかな空気が戻ります。

ベルちゃんも、ほっとしたようににこっと笑いました。

「そうそう。仲直りって、勇気の証なんだよ」

──その日、ヒヨコたちは知りました。

本当に仲がいいからこそ、すれ違うこともある。

でも、逃げずに向き合えば、絆はまたちゃんと結び直せるのだと。

📝ことばのおくりもの

永く続く関係には、必ず「すれ違い」や「課題」が訪れます。

それでも、離れず、話し合い、理解しようとする勇気があるかどうか。

それこそが、本当の“縁”を育てる力なのです。

※アイキャッチの説明

森の中で、けんかのあとに仲直りしたヒヨコくんとぴもんくんが、ぴたっとくっついてるピヨ。

少し後ろでひよたくんが見守っていて、ベルちゃんはたれ耳をゆらしてにこにこピヨ。

上には「にげない友情の形」の文字。

やさしい風とあったかい気持ちが広がるイラストピヨ🌿🐥🐰

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