[ひよこものがたり]言葉の贈り物編第4話「癒しの向こうへ」

ひよこものがたり

ある日の夕暮れ、ヒヨコ三兄弟は庭のブランコに並んで座っていました。

空はオレンジ色に染まり、風は心地よく頬をなでています。

「ねぇ、ひよたくん」ヒヨコくんがぽつりとつぶやきました。

「この間のケガ、もう治ったピヨ?」

ひよたくんは、自分の足に巻かれた小さな絆創膏を見て、にこっと笑いました。

「うん、だいぶ良くなったピヨ。でも、ちょっと怖いピヨ。もう一回転んだらどうしようって…」

ぴもんくんが首をかしげて言いました。

「じゃあ、無理に走らなくてもいいピヨ。ここでのんびりしてるのも楽しいピヨ」

けれど、その言葉を聞いたひよたくんの表情は少し曇りました。

「うん…でも、本当はまたみんなと全力で走りたいピヨ。怖さは残ってるけど、このまま座っているだけじゃ、ずっと進めない気がするんだピヨ」

ヒヨコくんは目を輝かせて立ち上がりました。

「だったら一緒に走ろうピヨ!最初はゆっくりでいいんだ。当たり前ピヨ!」

ひよたくんは小さく息を吸い込み、立ち上がりました。

まだ少し足はぎこちなかったけれど、二人の横でぴもんくんが笑顔で声をかけました。

「じゃあボクが間に入って走るピヨ!ひよたくんが転んでも、ボクがすぐ支えるピヨ!」

三羽は並んで駆け出しました。

最初はぎこちなくても、風を切る感覚が少しずつ心を軽くしていきました。

夕陽の下、笑い声が空に響きます。

癒しは大切。けれど、それは未来へ進むための助走。

ひよたくんは走りながら、ようやくそのことに気づいたのです。

📝ことばのおくりもの

癒しは「終わり」ではなく、「はじまり」の準備。

心を休めたら、少しずつでいいから未来へ足を運ぼう。

その一歩が、次の景色を見せてくれるから。

タイトルとURLをコピーしました