ある日の午後、森の広場では、ヒヨコ三兄弟とお友だちが集まって、大きな砂山づくり大会が始まっていました。
空は青く晴れわたり、風はそよそよ、木々の影がゆらゆらとそよいでいます。
「ボクがリーダーだから、みんなボクの言う通りにするピヨ!」
胸を張って宣言するのはヒヨコくん。
手にはキラリと光る500円玉。
なぜか砂山づくりのときも、ポケットにしっかり持っています。
「ボクはトンネルをつくるピヨ〜」
ぴもんくんはスコップを持ちながら、ふっくらしたお腹をゆらしてニコニコ。
「ボクは砂山の形を整えるピヨ」
ひよたくんは丁寧に砂をならし、形のバランスをとっています。
「よ〜し!じゃあ、ボクがてっぺんを作って旗を立てるピヨ!ボクが一番上に立つんだピヨ!」
ヒヨコくんは張り切って砂を盛り上げていきます。
けれど、ぴもんくんが作ったトンネルをうっかり踏みつぶしてしまいました。
「ヒヨコくん〜!そこ、トンネルだったピヨ〜!」
「そんなの知らないピヨ!だってリーダーはボクなんだピヨ!」
広場の空気がピリッと張りつめました。
ひよたくんは小さく深呼吸して、やさしく言います。
「ねぇ、ヒヨコくん。リーダーってね、みんなを引っぱるだけじゃなくて、みんなの考えも大事にする人のことだと思うピヨ。
自分を信じるのも大切だけど、相手を尊重するのも同じくらい大切ピヨ。」
そのとき、少し離れた木の根元で、コーヒーカップを持ったピヨちゃんがまぶたを半分閉じながら口を開きました。
「バランスが取れた尊重って、美しいピヨね。天秤が片方に傾くと、どっちも壊れちゃうピヨ。」
ヒヨコくんは、はっとしました。
「尊ばれる自分」でいようとするあまり、
「他を尊ぶ心」を忘れていたことに気づいたのです。
少し照れくさそうに、ぴもんくんのところへてちてち歩いていきました。
「ごめんピヨ、トンネル、もう一度いっしょにつくろうピヨ。」
「うん!いっしょに作ったほうが、きっとおいしい……じゃなくて楽しいピヨ!」
ぴもんくんが笑いながら答えると、みんなの顔が一気にほころびました。
今度はヒヨコくんが上から砂をかけて、ぴもんくんが中から形を整え、
ひよたくんが外側を丁寧に仕上げます。
夕日が差し込みはじめるころ、立派な砂山が完成しました。
その天辺には、ヒヨコくんが作った旗と、ぴもんくんのトンネルがちゃんとつながっています。
「ほらピヨ、見て!みんなの力でできたピヨ!」
「うん!きれいな山ピヨ!」
みんなで拍手をすると、ふとピヨちゃんが目を細めて言いました。
「尊重の天秤、今日はきっと、まっすぐ水平ピヨね。」
その言葉に、ヒヨコくんの胸の中が、ぽかぽかと温かくなりました。
“自分を大切にすること”と“相手を大切にすること”が、こんなにも気持ちのいいことだなんて――。
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📝 ことばのおくりもの
己を尊び、他を尊ぶ。
このふたつは、まるで天秤の両端のようなものです。
片方だけを重くすれば、たちまち傾いてしまいます。
自尊が強すぎれば、横暴になり、
他尊が強すぎれば、自分を見失います。
真の尊重とは、
「自分を大切にしながら、他人をも大切にできる心」。
それは決して派手ではないけれど、
日々の中で少しずつ磨かれていく、静かで確かな力です。
尊重の天秤が水平に保たれるとき、
そこにあるのは、やさしさと誇りが共に輝く“ほんとうの調和”です。
※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)
やわらかい砂場で、ヒヨコ三兄弟が大きな砂山を作っているイラストピヨ。
ヒヨコくんがてっぺんで旗を立てて、ぴもんくんがトンネルをほって、ひよたくんが形をきれいに整えているピヨ。
みんなで力を合わせて作った、立派な砂山ピヨ。
空には「尊重のてんびん」と書いてあって、あたたかい絵本みたいな雰囲気のイラストピヨ。 🐥✨

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