[ひよこものがたり]ことばのおくりもの第58話「いただきますピヨ!」

朝のアニマルランド。

台所から、ことこと、ぐつぐつ。

いい匂いがふわっと広がって、ヒヨコ三兄弟のおなかが同時に鳴りました。

「ボク、もう待てないピヨ!」

ヒヨコくんは椅子にちょこんと座り、スプーンを握ってうずうず。

ぴもんくんは、テーブルの上をじーっと見つめながら、

「これ、ぜったいおいしいピヨ……」と、よだれをこらえています。

ひよたくんは、手をひざにそろえて、ちゃんと待っていました。

そこへヒヨコママが、あたたかいスープを運んできます。

「はい、できたわよ」

その瞬間――

ヒヨコくんが、思わずスプーンをのばしました。

「……あら?」

ヒヨコママは、にこりともせず、やさしく立ち止まります。

「まだ、何か忘れていない?」

ヒヨコくんは、はっとして手を止めました。

ぴもんくんも、ひよたくんも、みんなで顔を見合わせます。

「……いただきます、ピヨ」

三兄弟がそろって言うと、

不思議なことに、スープの湯気がいっそうやさしく見えました。

ひと口飲むと、体の中までぽかぽかして、

なんだか心まで満たされていくようです。

「おいしいピヨ!」

「これ、だいすきピヨ!」

「ママ、ありがとうピヨ」

食べ終わったあと、空になったお皿を見つめて、

ひよたくんが小さく言いました。

「……ごちそうさまでした、ピヨ」

その声につられて、

「ごちそうさまでした、ピヨ!」

と、三兄弟の声がそろいます。

ヒヨコママは、少し目を細めて言いました。

「『いただきます』は、食べものの命や、作ってくれた人へのごあいさつ。

『ごちそうさま』は、ちゃんと受け取ったよ、ありがとう、っていう言葉なのよ」

ヒヨコくんは、空のお皿を見てうなずきました。

「言うと、ちゃんと大切に食べた気持ちになるピヨ」

その日から三兄弟は、

どんなごはんのときも、どんなに急いでいても、

かならず声に出して言うようになりました。

「いただきます」

「ごちそうさま」

それは、

ごはんと一緒に、感謝の気持ちを食べる合言葉でした。

📝 ことばのおくりもの

「いただきます」と「ごちそうさま」は、

ただのあいさつではありません。

命をいただくこと、

作ってくれた人の時間や想いを受け取ることを、

心でちゃんと感じるための言葉です。

忙しい日も、気持ちに余裕がない日も、

この二つの言葉を忘れなければ、

ごはんの時間は、心を整えるやさしい時間になります。

小さなひと言が、

毎日を大切にする力になります。

※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)

「あったかスープを前に、ヒヨコ三兄弟が“いただきますピヨ!”って元気にごあいさつしてるピヨ〜!
ヒヨコくんはスプーンを持ってわくわく、ぴもんくんはおなかぺこぺこなお顔、ひよたくんはおててをそろえておりこうさんピヨ。
ヒヨコママのやさしい笑顔と、ぽかぽか湯気が、とっても幸せいっぱいなイラストになってるピヨ〜!」

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