ある日のアニマルランド。
春のやわらかい風が吹く昼下がりでした。
ヒヨコ三兄弟は、いつもの広場で遊んでいました。
ヒヨコくんは石を積み上げて、
「どこまで高くできるかピヨ!」
と夢中です。
ぴもんくんはその横で、フィッシュアーモンドをぽりぽり食べながら応援しています。
ひよたくんは少し離れたところで、地面に落ちた羽を拾っては整えていました。
そのときです。
「こらーっ!」
突然、広場の向こうから大きな声が響きました。
見ると、ラジッピが倒れた花壇の前に立っていました。
花は踏み荒らされ、土もぐちゃぐちゃです。
「ラジッピがやったに違いないピヨ!」
ヒヨコくんが思わず叫びました。
「だって、そこに立ってるピヨ!」
ぴもんくんも不安そうに言います。
「うーん……なんだか怪しく見えるぴよ……」
その瞬間、周りの動物たちもざわざわし始めました。
「やっぱりラジッピだ」
「現場にいるしね」
ラジッピは黙ったまま、その場に立っています。
ラジオの体についたアンテナが、少しだけしゅんと下がっていました。
ひよたくんだけが、少し首をかしげました。
「でも……本当にそうかな、ピヨ」
ひよたくんは、花壇の周りをゆっくり歩き始めました。
足跡、倒れ方、土の散り方。
よく見ると、大きな足跡が花壇を横切って、川の方へ続いています。
「この足跡、ラジッピのじゃないピヨ」
「もっと大きな足だピヨ」
そのとき、川の向こうから、息を切らしたすーさんが現れました。
「はぁはぁ……ごめんぞう……」
すーさんは、申し訳なさそうに頭を下げました。
「転びそうになって、花壇を踏んでしまったぞう」
「ラジッピが『危ないです!』って止めてくれたけど、間に合わなかったぞう……」
その言葉に、広場は一気に静まり返りました。
ヒヨコくんは、胸の奥がちくっと痛みました。
「ボク……見たままだけで決めつけたピヨ……」
ぴもんくんも、フィッシュアーモンドをそっとポーチにしまいます。
「ちゃんと見てなかったぴよ……」
ラジッピは少し困ったように笑いました。
「私はただ、花壇を守ろうとしただけなんです」
「でも、皆さんがそう思うのも無理はありません」
「私がそこに立っていましたからね」
ひよたくんは、そっと微笑みました。
「表から見えることだけが、全部じゃないピヨ」
「ちゃんと見ようとすれば、違う景色が見えるピヨ」
夕方の光が、踏まれた花壇をやさしく照らしていました。
みんなで土をならし、花を立て直します。
ラジッピも、すーさんも、ヒヨコ三兄弟も力を合わせました。
誰も責める声は、もうありませんでした。
ただ、少しだけ静かで、少しだけあたたかい時間が流れていました。
📝 ことばのおくりもの
見えたものだけで、すぐに善と悪を決めてしまうと、
大切な背景や、誰かの気持ちを置き去りにしてしまいます。
物事は、たいてい単純ではありません。
理由や事情が、いくつも重なり合っています。
一歩立ち止まって、よく見ること。
耳を澄ますこと。
想像すること。
それができたとき、
世界は「正しい・間違い」の二色ではなく、
もっとやさしく、奥行きのある色に見えてくるのです。
※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)
森のアニマルランドに、ひよこたちと動物たちが集まっているピヨ。
お花の花壇の前に、足あとがついていて、みんな「だれがやったピヨ?」と困っているピヨ。
上の看板には「白か黒か?」と書いてあって、すーさんとラジっぴがしょんぼり花壇を見ているピヨ。

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