森の中を歩くヒヨコくんの足取りは、いつになく重たそうでした。
お気に入りだった金色のコインを、昨日なくしてしまったのです。
「どうしてボク、もっと気をつけなかったピヨ……」
肩を落とすヒヨコくんの目から、ぽろりと涙がこぼれました。
ぴもんくんが心配そうに近づいてきます。
「ヒヨコくん、大丈夫ピヨ? いっしょに探そうピヨ」
ひよたくんも小さな羽を広げて言いました。
「ボクも手伝うピヨ! きっと見つかるピヨ!」
三兄弟は夕暮れまで森じゅうを探しましたが、コインは見つかりませんでした。
帰り道、ヒヨコくんは静かに空を見上げました。
オレンジ色に染まった空が、優しく包み込むように広がっています。
そのとき、ヒヨコくんは気づきました。
――コインがなくなって悲しい気持ちの奥に、「大切だった」という想いがあったことに。
ぴもんくんとひよたくんが隣にいてくれることも、
「また明日もいっしょに探そう」と言ってくれた言葉も、
どれほどあたたかくて、かけがえのないものかを。
ヒヨコくんは涙をぬぐい、にっこり笑いました。
「うん……ボク、もう大丈夫ピヨ。大切なものがなんなのか、わかった気がするピヨ」
悲しみは、心を閉ざすためにあるのではなく、
本当に守りたいものを照らし出すために、そっと訪れるのかもしれません。
📝ことばのおくりもの
悲しみは、大切なものの価値を教えてくれる静かな先生です。
失う痛みの中でこそ、私たちは「何を大切にしていたのか」を深く理解します。
感情を拒まず、素直に受け入れることで、心は少しずつ成長し、
やがて自分の意思で未来へと歩み出す力になります。
※アイキャッチの説明
夕焼けの森で、ヒヨコくんがぽろっと涙をぬぐっているピヨ。
その横で、ふっくらぴもんくんとスタイのひよたくんが、そっと寄りそって見守っているピヨ。
オレンジ色の空とやさしい光に包まれて、「涙のあとにのこるもの」の文字がふんわり浮かんでいる、あったかい一枚ピヨ。

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