アニマルランドのある朝
ふわふわのベージュの毛並みをもつウサギのベルちゃんは、朝の光が差し込むキッチンで、いちごジャムをコトコト煮ながら、そっと胸に手をあててつぶやきました。
「いつか、自分のお菓子で、みんなをもっともっと笑顔にしたいな…。小さくてもいいから、カフェを開けたらいいな…!」
その夢を聞きつけたのは、ご近所の仲良し三兄弟――ヒヨコくん、ぴもんくん、ひよたくん。
「それなら、ボクたちが手伝うピヨ!」とヒヨコくん。
「ベルちゃんカフェ、絶対ステキになるピヨ~!」とぴもんくんが目をキラキラさせて言います。
ひよたくんも、しっかりとした声で言いました。
「小さなカフェでも、気持ちがこもっていれば、きっとすごく素敵になるピヨ!」
さっそくヒヨコ三兄弟は、アニマルランドの仲間たちにも声をかけました。
ゾウのおじさんすーさんは、大きな体で古い木材を運び、「ここに可愛い小屋を建てるぞう~!」と張り切ります。
ペンギンのお姉さんよいちゃんは、パステルカラーのメニュー表を手作りし、「ベルちゃんらしい、やさしい雰囲気にしたよ」とにっこり。
ラジオの精霊ラジッピは、さっそくラジオ放送で言いました。
「本日、森の広場にて、あたたかくて甘い、夢いっぱいの『ベルちゃんカフェ』がまもなくオープンします!」
仲間たちの力を借りて、森の広場の隅っこに、ちいさくて可愛い木の小屋――まるでおとぎ話の中から出てきたような、ぬくもりあるカフェの“可愛い小屋”が完成しました。
まるい窓からは、お菓子の甘い香りがふわっと漂い、屋根には小さな赤い風見鶏がちょこんと乗っています。
「ベルちゃん、何をメインメニューにするピヨ?」とヒヨコくんが聞くと、
ベルちゃんはちょっぴり照れながら、でもしっかりと答えました。
「やっぱり、イチゴたっぷりのスイーツがいいな!わたしの一番得意な味だから!」
ベルちゃんは、お菓子作りに精一杯の気持ちをこめて腕をふるいます。
ふわふわのイチゴショートケーキ、サクサクのイチゴタルト、そして、とろけるようなイチゴプリン…。
焼きあがるたびに、森じゅうに甘い香りがひろがり、仲間たちの顔がパァッと笑顔になります。
ところが――カフェオープンの前日。
空は急にどんより曇りはじめ、あっという間にザーザー大雨。
せっかくみんなで整えたカフェのまわりはぬかるみだらけになり、可愛い小屋の中にも雨が吹き込んできました。
ベルちゃんは、がっくり肩を落とし、耳をしゅんと垂らして言いました。
「うぅ…こんなに楽しみにしてたのに…。私、もうダメかも…。」
そんなとき、ひよたくんがそっとベルちゃんのそばに来て言いました。
「ベルちゃん、焦らなくていいピヨ。大事なのは、みんなで楽しくやることピヨ。ぼくら、何度だってやり直せるピヨ。」
ヒヨコくんとぴもんくんも続きます。
「明日、またみんなでやり直すピヨ!」
「ベルちゃんの夢、あきらめないピヨ~!」
よいちゃんは、濡れたメニュー表を優しく拭きながら言いました。
「ベルちゃん、大丈夫よ。明日はきっと晴れるわ。」
ベルちゃんは、目に浮かんだ涙をそっとぬぐって、みんなの顔を見回しました。
「うん、ありがとう。わたし、がんばる!」
そして次の日――
空はからりと晴れ渡り、ふわふわの白い雲が空いっぱいに広がりました。
朝日が森を照らし、可愛い小屋の中から、甘くて優しい香りが漂ってきます。
ついに、ベルちゃんカフェ、オープンです!
一番乗りのお客さんは、てちてち走ってきたヒヨコ三兄弟。
「いちごプリンくださいピヨ!」
「全部ちょっとずつ食べたいピヨ~!」
「いただきます、ピヨ!」
みんな夢中でスイーツをほおばり、にこにこ笑顔があふれます。
続いて、アニマルランドの仲間たちも次々と訪れ、可愛い小屋は笑い声と甘い香りで満ちていきました。
ベルちゃんはカウンターの中から、幸せそうなみんなの顔を見て、そっと胸に手をあてました。
「みんなが笑顔になってくれる…。それだけで、すごくうれしいな。」
こうして、ベルちゃんの小さなカフェは、アニマルランドの仲間たちの心にしっかりと根を下ろしました。
夢の「ベルちゃんカフェ」への第一歩――大成功です!
おしまい

タイトルのイラストには、可愛いカフェの前でいちごのケーキをもった笑顔のベルちゃんが描かれています。カフェの屋根にはヒヨコの風見鶏がついています。

