[ひよこものがたり]第59話「ヒヨコくんのくるりんタクトピヨ!」

今日は町内会のピヨピヨ音楽隊のコンサートの日。

朝から広場にはカラフルな旗が飾られ、甘いポップコーンの香りがふわりと漂っています。

小さなステージの上には、ちょこんとお立ち台が置かれ、その上に蝶ネクタイ姿のヒヨコくんが立っていました。

その向かいには、ポコポコ太鼓を抱えるぴもんくん、首から鈴をぶらさげたひよたくん、そして笛をしっかり握るピヨちゃん。

ほかのピヨピヨ音楽隊の子どもたちも、緊張とわくわくを抱えて整列しています。

客席には、ヒヨコパパとヒヨコママ、ベルちゃん、すーさん、リンちゃん、そして町中から集まったアニマルたちがぎゅうぎゅうと座り、開演を待っていました。

カメラを手にしたリスのおじいさんや、アイスを片手にしたカメの子どもたちもいます。

ヒヨコくんが胸を張って、元気いっぱいに言いました。

「よーし、みんな! ボクの合図でいくピヨ!」

「お~っ!」と、ぴもんくんがいつもより張り切った声を上げ、

「うん、がんばろうピヨ!」と、ひよたくんがきらきらした目で返します。

ピヨちゃんは落ち着いた声で「深呼吸して、いいテンポでいくピヨ」と、みんなをやさしく励ましました。

ところが——

ヒヨコくんはふと客席を見て、ぴたりと固まってしまいます。

「……すっごいアニマルの数ピヨ……」

広場の端から端まで、ふわふわの耳や長いしっぽがゆらゆら。期待のまなざしが一斉にヒヨコくんに向けられます。

前列のすーさんが大きな鼻をぶんぶん振って「がんばれ~ぞう!」と手を振ります。

ベルちゃんはにっこり笑って「応援してるわよ!」とやさしく声をかけました。

ヒヨコパパは穏やかな笑みを浮かべて、「楽しんでおいで、ヒヨコくん」とゆったりした声で言います。

ヒヨコママは手をパチパチと叩きながら、「がんばって!」と少し涙ぐみそうな顔。

すると——緊張のあまり、ヒヨコくんはぴょこんと観客席に向かっておじぎをし、そのままタクトをふりふり。

ぴもんくんが慌てて「ヒヨコくん、こっちこっちピヨ~!」と呼び、

ひよたくんも「演奏隊はこっちだよピヨ!」と首をふります。

ピヨちゃんは「落ち着くピヨ」と、やわらかい声でフォローしました。

「……はっ! ボク間違えたピヨ!!」

ヒヨコくんはくるりんと向き直り、蝶ネクタイをくいっと直して、ぴしっとタクトを構えます。

イラストの説明ピヨ!赤い蝶ネクタイと燕尾服を着て、ぴしっとタクトを構えるヒヨコくんピヨ!

「それでは——始めるピヨ!」

タクトが振られた瞬間、ピヨピヨ音楽隊の歌声がふわっと広がりました。

ぴもんくんのポコポコ太鼓はまるで小さな心臓の鼓動のように弾み、

ひよたくんの鈴はきらきらと光を散らすように響き、

ピヨちゃんの笛はやさしい風のように音を運びます。

音楽は広場を包み込み、聴いていた小さなウサギやリスの子どもたちが自然と体をゆらしました。

曲が終わると、一瞬の静けさのあと、客席からは大きな拍手と歓声!

イラストの説明ピヨ!左から順に、太鼓を叩くぴもんくん、鈴を鳴らすピヨちゃん、笛を吹くひよたくんピヨ

拍手はなかなか止まりませんでした。

ぱちぱち、わあわあ、と音が重なって、広場の空までふるえているみたいです。

ヒヨコくんは一瞬きょとんとしましたが、すぐに胸を張ってくるりと一礼。

「……当たり前ピヨ! みんな、最高だったピヨ!」

ぴもんくんは太鼓をぎゅっと抱きしめて、ほっぺを真っ赤にしながら

「ボク、ちゃんと叩けたピヨね……?」と小さく聞きます。

ひよたくんはにこにこしながらうなずいて、

「うん、すっごくいい音だったピヨ。客席もゆれてたピヨ」

ピヨちゃんは笛を下ろして、ほっと息をつきました。

「最初のテンポ、ぴったりだったピヨ。みんな落ち着いてたピヨ」

そのとき、客席のすーさんが立ち上がり、

「アンコール~! アンコールだぞう!」

と大きな声を張り上げます。

するとリンちゃんも腕を組んだまま、

「もう一曲くらい、いけるでしょ?」と口元をゆるめ、

ベルちゃんは手をたたきながら

「ぜひ聞きたいな」と目を輝かせました。

ヒヨコくんは一瞬、仲間たちを見回します。

ぴもんくんはこくん、ひよたくんもこくん。

ピヨちゃんは小さくうなずいて、

「いけるピヨ」と一言。

「よーし!」

ヒヨコくんはタクトを高く掲げました。

「ピヨピヨ音楽隊、アンコールいくピヨ!」

二曲目は、町のみんなが知っている「おひさまピヨピヨマーチ」。

さっきより少しだけ大胆に、少しだけ楽しく。

ぴもんくんの太鼓は弾む足取りになり、

ひよたくんの鈴は笑い声みたいに転がり、

ピヨちゃんの笛は空に向かってすうっと伸びていきます。

気づけば、客席のアニマルたちも手拍子を始め、

カメの子どもはのんびり首を振り、

リスのおじいさんはカメラを忘れて拍手をしていました。

最後の音がふわっと消えると、

広場いっぱいに、今日いちばん大きな拍手が咲きました。

ヒヨコママはとうとう涙をこぼし、

ヒヨコパパは深くうなずいて、

「いい音楽だったね」と静かに言いました。

ステージの上で、ヒヨコくんは仲間たちと顔を見合わせます。

「……ドキドキしたけど、楽しかったピヨ!」

「うん!」

「またやりたいピヨ!」

ピヨピヨ音楽隊の初めてのコンサートは、

こうして、あたたかい音と笑顔に包まれて、

大成功で幕を閉じたのでした。

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