ある日の午後。
ヒヨコくんは、ぴもんくんとひよたくんと一緒におうちの庭で遊んでいました。
ぴもんくんは、木の下でフィッシュアーモンドをもぐもぐ食べながら、のんびりと二人を見守っています。
ひよたくんは、小さなじょうろでお花に水をあげながら、優しく声をかけていました。
「お花さん、きれいに咲いてねピヨ」
そのときヒヨコくんは、面白半分でヒヨコママの大事にしていたお花の鉢を転がしてしまいました。
「わぁ!ころころして楽しいピヨ!」
ぴもんくんは目を丸くして、思わず立ち上がります。
「ヒヨコくん、それママの大事なお花ピヨ〜…!」
ひよたくんも慌てて駆け寄りました。
「ヒヨコくん、だめピヨ!それは遊ぶものじゃないピヨ!」
けれど、その拍子に ――
ガシャーン!
お花の鉢が割れてしまいました。
ぴもんくんはびっくりして、手に持っていたフィッシュアーモンドをポロポロ落としてしまいました。
ひよたくんは、割れた鉢としおれたお花を見て、ぎゅっと胸を押さえました。
ヒヨコママはその音を聞いて、慌てて外へ飛び出しました。
そして、目の前に散らばる土と花を見て、顔をくもらせました。
「ヒヨコくん …… それはね、ママがずっと大事に育てていたお花なのよ」
いつも優しいヒヨコママの声が、そのときだけピシッと鋭くなりました。
「いけません! 人の大切なものを壊して笑うなんてこと、してはいけません!」
ヒヨコくんはびっくりして立ちすくみました。
胸がキュッと痛くなって、目から涙がポロポロこぼれました。
ぴもんくんはそっとヒヨコくんのそばに来て、何も言わずに寄り添います。
ひよたくんは、ヒヨコくんとママを交互に見て、どうしたらいいのか分からず、ただぎゅっと手を握りしめていました。
「ママ …… ボクのこと、もう嫌いになっちゃったピヨ?」
その言葉を聞いたヒヨコママは、静かに背を向けて部屋の中へ戻っていきました。
ヒヨコくんはますます悲しくなって、こっそり庭のすみで泣き続けました。
ぴもんくんは、さっき落としたフィッシュアーモンドを拾いながらも、食べる気になれず、しょんぼりと座り込みました。
「ヒヨコくん、すごく悲しそうピヨ…」
ひよたくんは、小さな声でつぶやきます。
「でも…ちゃんと謝れば、きっと伝わるピヨ」
―― そのとき。
帰ってきたヒヨコパパがヒヨコくんを見つけて、やさしく抱き上げました。
「どうしたんだい、ヒヨコくん」
ぴもんくんとひよたくんも、心配そうにそばに集まります。
「ママに怒られたピヨ …… ボク、もう嫌われたピヨ …… 」
ヒヨコパパは少し笑って、ヒヨコくんの頭をなでました。
「ヒヨコくん、叱るっていうのはね、とてもむずかしいことなんだ。
愛がなければ、人は本気で叱ることなんてできないんだよ」
ヒヨコくんは涙の中で、パパの顔を見上げました。
「 …… ママ、ボクのことを思って叱ったピヨ?」
「そうだよ。ママは君に “ちゃんと分かってほしい” と思ったんだ」
その言葉を聞いて、ひよたくんは静かにうなずきました。
ぴもんくんも、「きっとそうピヨ」と優しくつぶやきます。
ヒヨコくんは、ギュッと目をこすって立ち上がりました。
「ボク …… ママにちゃんと謝ってくるピヨ!」
ぴもんくんは背中をぽんっと押しました。
「いってらっしゃいピヨ」
ひよたくんも、にっこり微笑みます。
「ヒヨコくんなら大丈夫ピヨ」
部屋に戻ると、ヒヨコママは割れた鉢のかけらを静かに片づけていました。
ヒヨコくんは、泣きながらママのそばにかけよりました。
「ママ、ごめんなさいピヨ …… ボク、ママがどれだけお花を大事にしてたか考えなかったピヨ …… もうしないピヨ!」
ヒヨコママはそっとしゃがんで、ヒヨコくんをやさしく抱きしめました。
「いいのよ、ヒヨコくん。謝ってくれてありがとう。ママはね、あなたが大好きよ」
その様子を、少し離れたところからぴもんくんとひよたくんが見守っていました。
ぴもんくんはほっとして、ようやくフィッシュアーモンドを一つ口に入れます。
「よかったピヨ〜…」
ひよたくんは、胸に手を当てて静かに微笑みました。
「ちゃんと気持ち、届いたピヨね」
ヒヨコくんの目からまた涙がこぼれました。
でも今度の涙は、温かくて、胸の奥がポカポカする涙でした。
―― その夜。
ヒヨコくんはヒヨコママと一緒に、お花の鉢を直して新しい苗を植えました。
ぴもんくんは土を運び、ひよたくんは丁寧に水をあげます。
月明かりの下、三兄弟とママの影がやさしく寄り添っていました。
📝 ことばのおくりもの
「褒めるは技術、叱るは愛。」
愛がなくても人は褒めることができます。
けれど、心から叱るには ――
その人を想う “愛” がなければできません。
叱られたとき、それは「あなたに期待しているよ」という愛の形かもしれません。
そして、そばで見守る人の優しさもまた、心を支える大切な愛です。
叱ることも、叱られることも、そして支えることも――
すべては「信じる」ことから生まれるのです。
※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)
ママがヒヨコくんをぎゅーっとだきしめてるピヨ…
ヒヨコくん、ポロポロなみだでしょんぼりピヨ…
わわれたおはなのはちもころがってるピヨ…🌼
でも「しかるはあい」って、やさしくつつんでるピヨ…✨

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