[ひよこものがたり]ことばのおくりもの 第49話「おはなしのバトン―」

ある晴れた午後、アニマルランドのベンチに、ヒヨコ三兄弟とお友だちが集まっていました。

ぴもんくんが、今日見つけたおいしいフィッシュアーモンドのお店の話を、ゆっくり、うれしそうに始めます。

「ボクね、あのね……」

ところが、その途中でヒヨコくんがぱっと声を上げました。

「それならボクも知ってるピヨ! ボクが行ったときはね——」

ぴもんくんの言葉は、ふわっと宙に浮いたまま。

ひよたくんは少しだけ首をかしげました。

(あれ……ぴもんくん、まだ話の途中だったピヨ)

今度はピヨちゃんが、静かな声で朝のコーヒーの話をし始めます。

「今日はね、少し苦めで——」

「それならボクの話も聞いてほしいピヨ!」

またヒヨコくんが、楽しそうに自分の話を重ねました。

ベンチの空気は、少しだけざわり。

誰も怒っていないけれど、なんだか話の糸が、ぷつぷつ切れてしまう感じです。

ひよたくんは、そっとヒヨコくんの袖をつつきました。

「ヒヨコくん、今ね、みんな“話してる人の番”を待ってるピヨ」

ヒヨコくんはきょとん。

「え? ボク、盛り上げてたつもりピヨ……」

そのとき、よいちゃんがやさしく微笑みました。

「楽しい気持ちは伝わってるよ。でもね、おはなしって“バトン”みたいなもの。

渡される前に走り出すと、転んじゃうこともあるの」

ヒヨコくんは、はっとして、ぴもんくんとピヨちゃんを見ました。

「ごめんピヨ。……続きを、聞かせてほしいピヨ」

ぴもんくんは、ほっとした顔でうなずき、

ピヨちゃんは、もう一度、ゆっくりと言葉を紡ぎました。

その日、ベンチの上には、

最後まで聞いてもらえた話と、

ちゃんと受け取られた気持ちが、ぽかぽかと残りました。

ヒヨコくんは心の中で思いました。

(話すのも大事。でも、聞くのはもっと大事ピヨ)

📝 ことばのおくりもの

会話は、気持ちを運ぶ小さなバトンです。

つい自分の話を重ねてしまうのは、悪気がないからこそ起こります。

けれど、相手の言葉が終わるまで待つことは、

「あなたの話を大切にしています」という、静かなやさしさ。

話す前に、ひと呼吸。

耳をひらいて、心を向ける。

それだけで、場の空気はあたたかく、

人の気持ちは、ちゃんと届くのです。

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