ある晴れた午後、アニマルランドのベンチに、ヒヨコ三兄弟とお友だちが集まっていました。
ぴもんくんが、今日見つけたおいしいフィッシュアーモンドのお店の話を、ゆっくり、うれしそうに始めます。
「ボクね、あのね……」
ところが、その途中でヒヨコくんがぱっと声を上げました。
「それならボクも知ってるピヨ! ボクが行ったときはね——」
ぴもんくんの言葉は、ふわっと宙に浮いたまま。
ひよたくんは少しだけ首をかしげました。
(あれ……ぴもんくん、まだ話の途中だったピヨ)
今度はピヨちゃんが、静かな声で朝のコーヒーの話をし始めます。
「今日はね、少し苦めで——」
「それならボクの話も聞いてほしいピヨ!」
またヒヨコくんが、楽しそうに自分の話を重ねました。
ベンチの空気は、少しだけざわり。
誰も怒っていないけれど、なんだか話の糸が、ぷつぷつ切れてしまう感じです。
ひよたくんは、そっとヒヨコくんの袖をつつきました。
「ヒヨコくん、今ね、みんな“話してる人の番”を待ってるピヨ」
ヒヨコくんはきょとん。
「え? ボク、盛り上げてたつもりピヨ……」
そのとき、よいちゃんがやさしく微笑みました。
「楽しい気持ちは伝わってるよ。でもね、おはなしって“バトン”みたいなもの。
渡される前に走り出すと、転んじゃうこともあるの」
ヒヨコくんは、はっとして、ぴもんくんとピヨちゃんを見ました。
「ごめんピヨ。……続きを、聞かせてほしいピヨ」
ぴもんくんは、ほっとした顔でうなずき、
ピヨちゃんは、もう一度、ゆっくりと言葉を紡ぎました。
その日、ベンチの上には、
最後まで聞いてもらえた話と、
ちゃんと受け取られた気持ちが、ぽかぽかと残りました。
ヒヨコくんは心の中で思いました。
(話すのも大事。でも、聞くのはもっと大事ピヨ)
📝 ことばのおくりもの
会話は、気持ちを運ぶ小さなバトンです。
つい自分の話を重ねてしまうのは、悪気がないからこそ起こります。
けれど、相手の言葉が終わるまで待つことは、
「あなたの話を大切にしています」という、静かなやさしさ。
話す前に、ひと呼吸。
耳をひらいて、心を向ける。
それだけで、場の空気はあたたかく、
人の気持ちは、ちゃんと届くのです。

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