[ひよこものがたり]ことばのおくりもの第51話「こころの雨と、あたたかい傘 」

その日は、朝から雨でした。

ぽつぽつ、しとしと。

窓をたたく雨の音が、お部屋を少し静かにしていました。

ヒヨコくんとぴもんくん、ひよたくんは、

お絵かきの時間でした。

「このクレヨン、かしてピヨ!」

「だめピヨ、ボクが先ピヨ!」

言い合っているうちに、

ヒヨコくんの手が大きく動いて――

びりっ。

ひよたくんが大切に描いていた絵が、

まんなかから破れてしまいました。

一瞬、時間が止まったみたいになりました。

ひよたくんの目が、ゆっくり大きくなって、

くちばしが、かすかに震えました。

「……あ……」

何も言えず、

ただ破れた紙を見つめています。

その様子を見て、ヒヨコママが近づいてきました。

そして、少しだけ強い声で言いました。

「ヒヨコくん。どうして、そんなに乱暴にしたの?」

その声を聞いた瞬間、

ヒヨコくんの胸が、ぎゅっと縮みました。

(まただ……)

(ボク、怒らせちゃった……)

(ママ、ボクのこと……)

ヒヨコくんは、下を向いて、

小さな声で言いました。

「……ごめんなさいピヨ」

でも心の中では、

「きらわれたかもしれない」

その気持ちが、雨みたいに降っていました。

ヒヨコママは、少し黙ってから、

ひよたくんの破れた絵をそっと持ち上げました。

「ひよたくん、この絵、どんな気持ちで描いたの?」

「……たのしかったピヨ。

ママに、みせたかったピヨ……」

ヒヨコママは、うなずいてから、

今度はヒヨコくんの目を見ました。

「ヒヨコくん。

ママが叱ったのはね、

ひよたくんの“たいせつ”を守ってほしかったから」

ヒヨコくんは、ゆっくり顔を上げました。

「……じゃあ……

ボクのこと、きらいになったわけじゃ……ないピヨ?」

ヒヨコママは、少し困ったように笑って、

でもとてもあたたかい声で言いました。

「きらいになるわけ、ないでしょう。

だって、ママはあなたたちが、だいすきだもの」

その言葉は、

雨の中で差し出された傘みたいでした。

ヒヨコくんの胸の中で、

冷たかった気持ちが、

じんわりほどけていきました。

ヒヨコくんは、破れた絵をそっと拾い上げました。

「……テープで、なおすピヨ。

ひよたくん、ごめんピヨ」

ひよたくんは、涙をぬぐって、

小さくうなずきました。

「……いっしょに、なおすピヨ」

雨はまだ降っていましたが、

お部屋の中は、さっきより少し、あたたかくなっていました。

📝 ことばのおくりもの

叱られた時、

心はとても不安になります。

「きらわれたのかな」

「もうだめかな」

そんな気持ちが、胸いっぱいになることもあります。

でも、叱る言葉の奥には、

守りたい気持ちがあります。

あなたを大切に思うからこそ、

間違いを伝えてくれる人がいる。

叱られた時は、

その言葉の裏にある

あたたかさを、

思い出してみてください。

※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)

あめピヨ、しとしとピヨ☔️
ヒヨコママがかさをさして、みんなをまもってるピヨ✨

ヒヨコくんはちょっぴりしょんぼりピヨ、
ぴもんくんはやぶれたえをもってるピヨ、
ひよたくんはほんをだいてるピヨ📕

でもみんな、いっしょであったかいピヨ💛

Comments are closed