[ひよこものがたり]ことばのおくりもの第52話「ころんでも、立ちあがるピヨ」

ある日の午後。

ヒヨコくんは広場のまんなかで、胸を張って立っていました。

「今日はボクが、みんなを引っぱるピヨ!」

当たり前ピヨ!…と言いたいところでしたが、

ヒヨコくんの胸は、どきどきと小さく震えていました。

今日はアニマルランドのお祭りの日。

ヒヨコくんは代表として、合図の太鼓を鳴らす大役を任されていたのです。

(失敗したらどうしようピヨ…)

そんな不安を、ヒヨコくんはぎゅっと飲み込みました。

「ボクならできるピヨ!」

そう言って、太鼓の前に立ちます。

――ドン!

…のはずが。

「スカッ」

太鼓のバチが、つるんとすべって地面に落ちてしまいました。

しん……と静まる広場。

みんなの視線が、一気にヒヨコくんに集まります。

ヒヨコくんの顔が、みるみる赤くなりました。

胸の奥が、きゅっと苦しくなります。

(ボク、失敗したピヨ……)

そのとき、後ろから小さな声が聞こえました。

「ヒヨコくん……」

振り返ると、ぴもんくんとひよたくんが、心配そうに見ていました。

ヒヨコくんは、一度ぎゅっと目を閉じました。

そして、深く息を吸います。

「……ごめんピヨ。でも、もう一回やらせてほしいピヨ!」

広場がざわっとします。

でもヒヨコくんは、逃げませんでした。

落ちたバチを拾い、

今度は両足をしっかり地面につけ、

太鼓をまっすぐ見つめます。

(さっきの失敗、ムダじゃないピヨ)

(すべった理由も、力の入れ方も、もうわかったピヨ)

――ドンッ!!

今度は、空に響くような、力強い音。

「わあっ!」

「すごい!」

広場いっぱいに、拍手が広がりました。

ヒヨコくんの胸の中で、なにかがぽっとあたたかくなります。

失敗したからこそ、

どうしたらうまくいくか、ちゃんと考えられた。

逃げなかったからこそ、

自分の足で立てた。

ヒヨコくんの出番が終わるころ、

ヒヨコくんは少しだけ誇らしそうに笑っていました。

「ころんでも、立ちあがればいいピヨ!」

「それが、前に進むってことピヨ!」

その姿を見て、みんなも、そっと勇気をもらったのでした。

📝 ことばのおくりもの

失敗は、終わりではありません。

それは「だめだった証」ではなく、

次にうまくいくための、大切なヒントです。

ころんだとき、恥ずかしくなったとき、

「もう一回やってみよう」と思えたなら、

その瞬間から、もう成功への道は始まっています。

失敗しても大丈夫。

立ちあがろうとしたあなたは、

すでに前に進んでいます。

※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)

ころんでもあきらめないヒヨコくんが、たいこをたたこうとしているピヨ!
バチをおとしてびっくりしてるけど、もういちどがんばる顔がとってもかっこいいピヨ!
うしろでぴもんくんとひよたくんも、ドキドキしながら応援してるピヨ〜!

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