[ひよこものがたり]ことばのおくりもの第72話「ことばのかたち」

ある朝、ヒヨコくんは森の広場で、少し離れたところにいるぴもんくんを見つけました。

ぴもんくんは誰かと話しているようでしたが、声は風に流されて聞こえません。

ヒヨコくんは、じっとその様子を見つめました。

「……なんだか、楽しそうピヨ」

胸の奥が、ちくっとしました。

(ボクのこと、もうどうでもいいのかなピヨ)

(さっきのこと、怒ってるのかもしれないピヨ)

見えているのは、

「ぴもんくんが誰かと話している」

ただそれだけ。

でもヒヨコくんの頭の中では、

見えない気持ちが、勝手にふくらんで、

勝手に形を作って、

勝手にヒヨコくんを傷つけていました。

しばらくして、ひよたくんがそっと言いました。

「ヒヨコくん、行って聞いてみたらいいピヨ」

「え……?」

「見えてないところは、想像じゃなくて、言葉で確かめるピヨ」

ヒヨコくんは少しだけ勇気を出して、ぴもんくんのところへ行きました。

「さっき……ボク、何かしたピヨ?」

ぴもんくんは目をまん丸にして、首をかしげます。

「え?してないピヨ?」

「さっき話してたのは、ベルちゃんにおやつの相談してただけピヨ。ヒヨコくんと一緒に食べたくて」

ヒヨコくんの胸の中で、

黒くて重たかったものが、ふわっとほどけました。

見えていなかったのは、

ぴもんくんのやさしい気持ち。

でもそれは、

想像して当てるものじゃなくて、

言葉にしてもらって、やっと見えるものだったのです。

その日、ヒヨコくんは思いました。

「見えてるものだけで決めつけるのも、

見えないものを勝手に想像するのも、

どっちも違うピヨ」

大切なのは、

言葉で、ちゃんと形を見せ合うこと。

ひよこたちは並んで歩きながら、

同じ景色を見て、

同じ気持ちを、言葉で確かめ合っていました。

📝 ことばのおくりもの

人は、見えているものしか本当には分からない。

見えない気持ちは、想像すると簡単に不安や誤解に変わってしまう。

だからこそ、

黙って察するより、

勝手に決めつけるより、

言葉で伝えることがやさしさになる。

言葉は、

見えない気持ちに輪郭を与え、

本当の形を、そっと見せてくれる。

※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)

森の小道で、ヒヨコ三兄弟が向かい合って話しています。ヒヨコくんは赤いスカーフをつけて考え込み、ぴもんくんは青い魚のポーチを身につけて話し、ひよたくんはピンクの水玉スタイをつけて笑顔で聞いています。それぞれの頭上には、ハート・はてな・点々・笑顔の吹き出しが描かれ、「ことばのかたち」というタイトルが大きく書かれた、優しくあたたかな雰囲気のイラストです。

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