ある日の午後。
森の広場でヒヨコくんたちはサッカーの練習をしていました。
ヒヨコくんはドリブルの途中で、何度も転んでしまいます。
「なんでうまくいかないピヨ〜!ボク、もうヤダピヨ!」
ひよたくんは少し離れた場所から、その様子を見ていました。
(また転んじゃったピヨ…いたそうピヨ)
(でも…言ったらイヤな顔されるかもピヨ)
(でもでも…このままだと、ヒヨコくんもっとイヤになっちゃうピヨ)
小さな胸が、ドキドキします。
(ボク、しっかり者って言われるけど…ほんとはこわいピヨ)
(でも、言わないほうがもっとこわいピヨ)
ひよたくんは、ぎゅっと足をふんばって歩き出しました。
「ヒヨコくん…さっきから、前だけ見て走ってるピヨ。足元、ぜんぜん見てないピヨ」
ヒヨコくんはムッとします。
「えぇ〜!?そんな言い方しなくてもいいピヨ!」
その言葉に、ひよたくんの心がちくっとしました。
(やっぱりイヤだったピヨ…)
(でも、今は引いちゃダメピヨ)
ぴもんくんがモグモグ言います。
「ヒヨコくん、転ぶたびに痛そうピヨ。ボクたち心配ピヨ」
ベルちゃんもやさしく言いました。
「言いにくいことって、言う方もドキドキするの」
ヒヨコくんが振り返ります。
「え…そうピヨ?」
ひよたくんは小さくうなずきました。
(気づいてくれたらいいピヨ…怒っててもいいから、伝わってほしいピヨ)
「ヒヨコくんが、もっと楽しくサッカーできたらいいなって思ったピヨ」
ヒヨコくんは少し黙り込みます。
さっきのひよたくんの顔を思い出します。
心配して、でも勇気を出している顔。
「…ボク、イヤなこと言われたって思ってたピヨ」
ひよたくんは首を振ります。
「イヤなことじゃないピヨ。大事なことピヨ」
ヒヨコくんは深呼吸しました。
「じゃあ…もう一回やるピヨ!足元見るピヨ!」
今度は転ばず、ボールがスーッと進みます。
ヒヨコくんは振り返って、少し照れながら言いました。
「さっきはありがとうピヨ。ちょっとイタかったけど…うれしかったピヨ」
ひよたくんの胸のドキドキが、やっとやわらぎました。
(ああ…言ってよかったピヨ)
森の風が、そっとみんなを包みました。
📝ことばのおくりもの
本当のやさしさは、
ときどき勇気の服を着てやってくる。
言う方の心も、実はふるえている。
それでも伝えるのは、
あなたの未来を信じているから。
痛い言葉の中に、
あたたかい願いが隠れていることがある。
その願いに気づけたとき、
人はまたひとつ、大きくなれる。 🌼
※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)
花が咲く広場で、ヒヨコくんがサッカーボールにつまずいて転びそうになっています。赤いスカーフのヒヨコくんを見て、ぴもんくんとひよたくん、そしてリボンをつけたベルちゃんが心配そうに見守っています。上には「そのひと言のうらがわ」というタイトルがあり、左下には「ことばのおくりもの」のメッセージが添えられた、思いやりを感じる優しい雰囲気のイラストです。

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