[ひよこものがたり]ことばのおくりもの第73話「そのひと言のうらがわ」

ある日の午後。

森の広場でヒヨコくんたちはサッカーの練習をしていました。

ヒヨコくんはドリブルの途中で、何度も転んでしまいます。

「なんでうまくいかないピヨ〜!ボク、もうヤダピヨ!」

ひよたくんは少し離れた場所から、その様子を見ていました。

(また転んじゃったピヨ…いたそうピヨ)

(でも…言ったらイヤな顔されるかもピヨ)

(でもでも…このままだと、ヒヨコくんもっとイヤになっちゃうピヨ)

小さな胸が、ドキドキします。

(ボク、しっかり者って言われるけど…ほんとはこわいピヨ)

(でも、言わないほうがもっとこわいピヨ)

ひよたくんは、ぎゅっと足をふんばって歩き出しました。

「ヒヨコくん…さっきから、前だけ見て走ってるピヨ。足元、ぜんぜん見てないピヨ」

ヒヨコくんはムッとします。

「えぇ〜!?そんな言い方しなくてもいいピヨ!」

その言葉に、ひよたくんの心がちくっとしました。

(やっぱりイヤだったピヨ…)

(でも、今は引いちゃダメピヨ)

ぴもんくんがモグモグ言います。

「ヒヨコくん、転ぶたびに痛そうピヨ。ボクたち心配ピヨ」

ベルちゃんもやさしく言いました。

「言いにくいことって、言う方もドキドキするの」

ヒヨコくんが振り返ります。

「え…そうピヨ?」

ひよたくんは小さくうなずきました。

(気づいてくれたらいいピヨ…怒っててもいいから、伝わってほしいピヨ)

「ヒヨコくんが、もっと楽しくサッカーできたらいいなって思ったピヨ」

ヒヨコくんは少し黙り込みます。

さっきのひよたくんの顔を思い出します。

心配して、でも勇気を出している顔。

「…ボク、イヤなこと言われたって思ってたピヨ」

ひよたくんは首を振ります。

「イヤなことじゃないピヨ。大事なことピヨ」

ヒヨコくんは深呼吸しました。

「じゃあ…もう一回やるピヨ!足元見るピヨ!」

今度は転ばず、ボールがスーッと進みます。

ヒヨコくんは振り返って、少し照れながら言いました。

「さっきはありがとうピヨ。ちょっとイタかったけど…うれしかったピヨ」

ひよたくんの胸のドキドキが、やっとやわらぎました。

(ああ…言ってよかったピヨ)

森の風が、そっとみんなを包みました。

📝ことばのおくりもの

本当のやさしさは、

ときどき勇気の服を着てやってくる。

言う方の心も、実はふるえている。

それでも伝えるのは、

あなたの未来を信じているから。

痛い言葉の中に、

あたたかい願いが隠れていることがある。

その願いに気づけたとき、

人はまたひとつ、大きくなれる。 🌼

※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)

花が咲く広場で、ヒヨコくんがサッカーボールにつまずいて転びそうになっています。赤いスカーフのヒヨコくんを見て、ぴもんくんとひよたくん、そしてリボンをつけたベルちゃんが心配そうに見守っています。上には「そのひと言のうらがわ」というタイトルがあり、左下には「ことばのおくりもの」のメッセージが添えられた、思いやりを感じる優しい雰囲気のイラストです。

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