動画版もあるから見てピヨ🐤
第1章 パパに会いたいピヨ!
春風がそよぐ午後の陽だまり。
大きな窓から差し込む柔らかな光が、赤い水玉ラグの縁をほんのりオレンジ色に染めています。そこにごろりと寝ころぶヒヨコくん。
ふわふわの羽毛に包まれ、頬にはほんのり温かな陽射し。目を細めたまま、ぽつりとつぶやきました。
「ボク、パパに会いたいピヨ……!」
その言葉は、まるで空気を震わせるほどの重みをもって、静かな部屋に響き渡ります。
ぴもんくんは、大切に抱えていたフィッシュアーモンドをぽろりと落とし、その一粒がカツンと床に当たる音が緊張感を引き立てました。
ひよたくんは、開いていた絵本のページにそっと指を置いたまま、ゆっくり顔を上げます。
三羽は揃って、台所へ小走り。
レンガ模様のタイルが可愛らしいキッチンには、ヒヨコママが大きなおたまを手に、ぐつぐつとスープを煮込んでいるところでした。
蒸気に混じって香る、野菜とハーブの優しい匂い。
「ママー! パパに会いにいきたいピヨ!」
おたまを持つ手が止まり、ヒヨコママの瞳が少し潤みます。やわらかな声ながらも、責任感の強い母の口調で続けました。
「海外に行くにはね、飛行機に乗らないといけないの。パスポートやお金、いろんな準備があるのよ。」
それを聞いて、三羽はきりっと背筋を伸ばします。ひよたくんの眉間には、小さなシワが寄り、真剣そのもの。
「ボクたち、ぜんぶちゃんとやるピヨ! 勉強も、お片づけも、お手伝いも、100点でやるピヨ!」
ヒヨコママはにっこりと微笑み、優しく羽根を一本ずつ撫でるように言いました。
「約束よ。途中であきらめないこと。それができたら、きっとパパに会いにいけるわ。」
こうして、小さなヒヨコたちの“大冒険”への第一歩が踏み出されたのでした。
第2章 めざせ空港!アニマルタウン大行進ピヨ!
出発の日の朝。空は淡く澄み、あたりには新緑の香りが漂っています。三羽はそれぞれ、ヒヨコ用のスーツケースにお菓子と手製の地図を詰め込みました。
地図には、駅やバス停、コンビニのマークが丁寧に描かれています。
「電車、乗り遅れたら終わりピヨ!」
「おやつは移動中に食べる用ピヨ!」
「『ピヨ』つけすぎないように気をつけるピヨ……」
と、楽しげな会話を弾ませながら、舗装された道をてちてちと歩きます。途中、ベルちゃんとリンちゃんが森から現れ、大きなキャリーケースをゴロゴロ転がす三羽を不思議そうに見つめました。
「おっきなスーツケース持って、どこ行くのよ?」
リンちゃんの問いかけに、ヒヨコくんは照れくさそうに笑いながら答えます。
「パパに会いにいくピヨ!」
それを聞いて驚いたベルちゃんは、「ヒヨコくんたちのパパって、海の向こうにいるんだよね?」と頭の上にびっくりマークとクエスチョンマークをつけて驚きました。
さらに歩くと、エルちゃんが飛び出してきて、手にはサクサク揚がったポテトを山盛りに。
「これ、おやつに持ってって~!」
ほおばると口の周りにソースの跡がつき、それを見た三羽は大笑い。
やがてアニマル駅のレンガ造りのホームに到着し、発車ベルとともに電車の扉がゆっくり開きました。
電車を乗り継ぎ、バス停へ。ところが、慣れない地図に頭を悩ますうちに、気づけば山道の分かれ道。目の前には深い森へ続く小道が……!
「乗るバス、まちがえたピヨー!!」
そのとき、すーさんの車が現れて、三羽を急いで乗せてくれました。さらにラジッピが手にしていた空港マップが大活躍。小さな冒険家たちは笑いあり、ハラハラありの大行進を続け、ついに赤い門の空港入り口が見えたのです。
第3章 初めての飛行機ピヨ!
ガラス張りの大きな空港ターミナル。高い天井には光るパイプが網の目のように張り巡らされ、天井灯がぽつぽつと星のように瞬きます。床にはスーツケースのキャスターがコトコト音を立て、行き交う人々の服装はさまざま。
「わあ……すごいピヨ……」
ヒヨコくんはきらきらした瞳でキョロキョロ。
「空港って、でっかいおもちゃ箱みたいピヨ……」
しかし、周囲から聞こえ聞きなれないアナウンスに、三羽はきょとん。パスポートカウンターで列に並びながらも、みんなに「ピヨ」をつけすぎないよう、こっそり注意し合います。
いよいよ搭乗ゲート前。滑らかなスロープを上り、機体のドアが大きく開かれると、冷たい外気と金属の匂い。窓際の席に座ると、エンジン音が低く唸り、地上スタッフのやり取りが隣席まで聞こえてきます。
ビュンという振動とともに、滑走路を走り出す飛行機。景色が次第に後ろに流れ、緑の大地が雲へと変わっていきます。
「くも、上から見ると綿あめみたいピヨ~」
体がふわりと浮くような感覚に興奮しつつ、ヒヨコ三兄弟はそれぞれの時間を過ごします。ぴもんくんは自慢のお弁当をゆっくり味わい、ひよたくんは配られた機内誌で「海外でのマナー」ページに夢中。
そして、ヒヨコくんはそっとポケットの500円玉を握りしめながら、小さな声でつぶやきました。
「もうすぐ……パパに会えるピヨ……!」
第4章 言葉のカベ!?海外ドキドキ探検ピヨ!
視界に広がるのは、南国の暑い陽射しと鮮やかな建物の壁。街を貫く細い路地には、屋台の呼び声、スパイシーな香辛料の匂い、人々の笑い声が入り乱れます。
「Excuse me?」
外国のアニマルのつぶやきに、ぴもんくんは慌ててポケットから指さし英語帳を取り出し、ひよたくんはスマホの翻訳アプリを立ち上げます。
言葉は分からなくとも、みんなの表情はあたたかく、目が合うとにっこり微笑んでくれる人が多いのです。
三羽はジェスチャーとアプリと、そして何より「ピヨ!」の元気な掛け声で、無事にタクシー乗り場へ。車窓に流れるヤシの木、真っ青な空、カラフルな広告看板を目に焼きつけつつ、ついに――
「こ、ここがパパのビルピヨ……!」
と、ガラス張りの高層ビルを前に足を止めました。
第5章 パパとの再会ピヨ!
静かなエレベーターホール。白い大理石の床にシックな絨毯が敷かれ、蛍光灯の光がほんのり反射します。案内板を見上げながら、三羽の胸はドキドキと高鳴りっぱなし。
扉が「カチャリ」と開き、そこに立っていたのは――
スーツに身を包んだヒヨコパパ。深みのある瞳、少し白いネクタイ、そして久しぶりの家族の姿に嬉しそうな表情。
「パパーーー!!」
三羽は一斉に駆け寄り、小さな羽を広げてパパに飛びつきます。ヒヨコパパも、大きな羽で三羽を優しく抱きしめました。
「みんな……力を合わせて頑張ってきたんだね……!」
ひよたくんのスタイには、ぽたりとパパの涙がひとしずく。ぴもんくんはそっとフィッシュアーモンドを差し出し、ヒヨコくんはうるうると見つめながら言いました。
「会いたかったピヨ……。ママと約束して、全部がんばったピヨ!」
そんな言葉を聴いて、パパの瞳はさらに潤み、三羽の小さなハートは満たされていきます。
第6章 家族って、あったかいピヨ!
その夜は、パパのオフィス近くの小さなダイニングルームで団らん。
木製の丸テーブルの中央には、お皿いっぱいのごちそうとキャンドルが揺れる温かな光。
笑い声と会話が弾み、スープをすする音、ナイフとフォークのリズムが心地よいBGMのよう。ヒヨコパパは三羽の手をそっと握りしめます。
「次は、パパが帰る番だね。ボクたちの家に、ちゃんと帰るよ。」
その言葉に、三羽は満面の笑み。食後、ヒヨコくんはそっとポケットから大事にしていた500円玉を取り出し、パパの手のひらにのせました。
「これ、パパにあずけるピヨ。また会える日までのおまもりピヨ。」
パパは微笑みながらそれを受け取り、しっかりとポケットにしまい込むと、三羽をもう一度抱きしめました。
帰りの飛行機では、窓の外に広がる星空を眺めながら、三羽はすぐに眠りに落ちていきます。小さな胸に詰まった幸せな想い出を抱いて――。
おしまいピヨ。