ある日の午後。
川の向こうから、ゆっさゆっさと大きな影が近づいてきました。
「うーん、困ったぞう……」
ジーパンとパーカー姿のすーさんが、ため息まじりにヒヨコ家の前で立ち止まりました。
そこへ、てちてちと出てきたのはヒヨコ三兄弟。
ヒヨコくん、ぴもんくん、ひよたくんです。
「どうしたのピヨ?」
ひよたくんが心配そうに聞きました。
「実はなぁ……仕事のことで悩んでる友だちがいるんだぞう。
『どうしたらいい?』って聞かれたから、真剣に話を聞いて、
俺なりにアドバイスしたんだぞう」
すーさんは、どすんと腰を下ろしました。
「でもな……そのあと何ひとつ、やらないんだぞう。
同じことでまた悩んで、また相談してきて……
俺、だんだんモヤモヤしてきちゃってぞう」
ヒヨコくんが腕を組んで言いました。
「それはイヤピヨね!せっかく考えたのに、モヤモヤするの当たり前ピヨ!」
ぴもんくんは、もぐもぐしながら首をかしげます。
「うーん……でも、その人は“やりたい”より“聞いてほしかった”だけかもしれないピヨ」
ひよたくんは、少し考えてから、静かに話しました。
「すーさんは、ちゃんと相手のことを思って話したピヨね。
それだけで、もう十分やさしいと思うピヨ」
すーさんは目をぱちくりさせました。
「……十分ぞう?」
「うんピヨ」
ひよたくんはうなずきました。
「アドバイスってね、渡した瞬間から“相手のもの”になるピヨ。
受け取って使うかどうかは、その人が決めることなんだピヨ」
すーさんは、しばらく空を見上げていました。
川の水がきらきら光っています。
「そっか……
俺は“助けたい”気持ちが、
“やってほしい”に変わっちゃってたのかもしれないぞう」
その顔が、少しやわらぎました。
「じゃあ次からは、できることだけやって、相手がやるかどうかは相手に任せるぞう。
それでモヤモヤしないようにするぞう」
ヒヨコ三兄弟は、にっこり。
「それでいいと思うピヨ」
「すーさん、やさしいぞう!」
「ぞうって言っちゃってるピヨ」
すーさんは大きく笑いました。
「ははは!それは俺の口ぐせぞう!」
川風がふわっと吹いて、
すーさんの心のモヤモヤも、少し遠くへ流れていきました。
📝 ことばのおくりもの
人にできるのは、
話を聞いて、気持ちを込めて言葉を渡すことまで。
その言葉をどう使うか、
歩き出すかどうかは、相手の人生。
やらない選択をされても、
あなたのやさしさまで無駄になったわけじゃない。
「届けた」こと自体が、
もう立派な思いやりです。
※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)
かわのほとりで、すーさんが「うーん困ったぞう…」ってお話してるピヨ〜!
ヒヨコくんたちは、まんまるおめめでしっかり聞いてるピヨ。
ぴもんくんはフィッシュアーモンドをもぐもぐしながら考え中ピヨ〜。
ひよたくんは本を持って、やさしく言葉を伝えてるピヨ。
空も川もきらきらで、モヤモヤが風に流れていくような、あったかい絵本みたいなイラストピヨ〜!

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