その日は、朝から雨でした。
ぽつぽつ、しとしと。
窓をたたく雨の音が、お部屋を少し静かにしていました。
ヒヨコくんとぴもんくん、ひよたくんは、
お絵かきの時間でした。
「このクレヨン、かしてピヨ!」
「だめピヨ、ボクが先ピヨ!」
言い合っているうちに、
ヒヨコくんの手が大きく動いて――
びりっ。
ひよたくんが大切に描いていた絵が、
まんなかから破れてしまいました。
一瞬、時間が止まったみたいになりました。
ひよたくんの目が、ゆっくり大きくなって、
くちばしが、かすかに震えました。
「……あ……」
何も言えず、
ただ破れた紙を見つめています。
その様子を見て、ヒヨコママが近づいてきました。
そして、少しだけ強い声で言いました。
「ヒヨコくん。どうして、そんなに乱暴にしたの?」
その声を聞いた瞬間、
ヒヨコくんの胸が、ぎゅっと縮みました。
(まただ……)
(ボク、怒らせちゃった……)
(ママ、ボクのこと……)
ヒヨコくんは、下を向いて、
小さな声で言いました。
「……ごめんなさいピヨ」
でも心の中では、
「きらわれたかもしれない」
その気持ちが、雨みたいに降っていました。
ヒヨコママは、少し黙ってから、
ひよたくんの破れた絵をそっと持ち上げました。
「ひよたくん、この絵、どんな気持ちで描いたの?」
「……たのしかったピヨ。
ママに、みせたかったピヨ……」
ヒヨコママは、うなずいてから、
今度はヒヨコくんの目を見ました。
「ヒヨコくん。
ママが叱ったのはね、
ひよたくんの“たいせつ”を守ってほしかったから」
ヒヨコくんは、ゆっくり顔を上げました。
「……じゃあ……
ボクのこと、きらいになったわけじゃ……ないピヨ?」
ヒヨコママは、少し困ったように笑って、
でもとてもあたたかい声で言いました。
「きらいになるわけ、ないでしょう。
だって、ママはあなたたちが、だいすきだもの」
その言葉は、
雨の中で差し出された傘みたいでした。
ヒヨコくんの胸の中で、
冷たかった気持ちが、
じんわりほどけていきました。
ヒヨコくんは、破れた絵をそっと拾い上げました。
「……テープで、なおすピヨ。
ひよたくん、ごめんピヨ」
ひよたくんは、涙をぬぐって、
小さくうなずきました。
「……いっしょに、なおすピヨ」
雨はまだ降っていましたが、
お部屋の中は、さっきより少し、あたたかくなっていました。
📝 ことばのおくりもの
叱られた時、
心はとても不安になります。
「きらわれたのかな」
「もうだめかな」
そんな気持ちが、胸いっぱいになることもあります。
でも、叱る言葉の奥には、
守りたい気持ちがあります。
あなたを大切に思うからこそ、
間違いを伝えてくれる人がいる。
叱られた時は、
その言葉の裏にある
あたたかさを、
思い出してみてください。
※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)
あめピヨ、しとしとピヨ☔️
ヒヨコママがかさをさして、みんなをまもってるピヨ✨
ヒヨコくんはちょっぴりしょんぼりピヨ、
ぴもんくんはやぶれたえをもってるピヨ、
ひよたくんはほんをだいてるピヨ📕
でもみんな、いっしょであったかいピヨ💛

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