ある朝、ヒヨコくんは森の広場で、少し離れたところにいるぴもんくんを見つけました。
ぴもんくんは誰かと話しているようでしたが、声は風に流されて聞こえません。
ヒヨコくんは、じっとその様子を見つめました。
「……なんだか、楽しそうピヨ」
胸の奥が、ちくっとしました。
(ボクのこと、もうどうでもいいのかなピヨ)
(さっきのこと、怒ってるのかもしれないピヨ)
見えているのは、
「ぴもんくんが誰かと話している」
ただそれだけ。
でもヒヨコくんの頭の中では、
見えない気持ちが、勝手にふくらんで、
勝手に形を作って、
勝手にヒヨコくんを傷つけていました。
しばらくして、ひよたくんがそっと言いました。
「ヒヨコくん、行って聞いてみたらいいピヨ」
「え……?」
「見えてないところは、想像じゃなくて、言葉で確かめるピヨ」
ヒヨコくんは少しだけ勇気を出して、ぴもんくんのところへ行きました。
「さっき……ボク、何かしたピヨ?」
ぴもんくんは目をまん丸にして、首をかしげます。
「え?してないピヨ?」
「さっき話してたのは、ベルちゃんにおやつの相談してただけピヨ。ヒヨコくんと一緒に食べたくて」
ヒヨコくんの胸の中で、
黒くて重たかったものが、ふわっとほどけました。
見えていなかったのは、
ぴもんくんのやさしい気持ち。
でもそれは、
想像して当てるものじゃなくて、
言葉にしてもらって、やっと見えるものだったのです。
その日、ヒヨコくんは思いました。
「見えてるものだけで決めつけるのも、
見えないものを勝手に想像するのも、
どっちも違うピヨ」
大切なのは、
言葉で、ちゃんと形を見せ合うこと。
ひよこたちは並んで歩きながら、
同じ景色を見て、
同じ気持ちを、言葉で確かめ合っていました。
📝 ことばのおくりもの
人は、見えているものしか本当には分からない。
見えない気持ちは、想像すると簡単に不安や誤解に変わってしまう。
だからこそ、
黙って察するより、
勝手に決めつけるより、
言葉で伝えることがやさしさになる。
言葉は、
見えない気持ちに輪郭を与え、
本当の形を、そっと見せてくれる。
※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)
森の小道で、ヒヨコ三兄弟が向かい合って話しています。ヒヨコくんは赤いスカーフをつけて考え込み、ぴもんくんは青い魚のポーチを身につけて話し、ひよたくんはピンクの水玉スタイをつけて笑顔で聞いています。それぞれの頭上には、ハート・はてな・点々・笑顔の吹き出しが描かれ、「ことばのかたち」というタイトルが大きく書かれた、優しくあたたかな雰囲気のイラストです。

Comments are closed