ある晴れた日のこと。
ヒヨコ三兄弟――ヒヨコくん、ぴもんくん、ひよたくんは、森の中でピクニックを楽しんでいました。
おにぎりに、フィッシュアーモンド、冷たいジュース。
木漏れ日の下で食べるお弁当は、いつもよりおいしく感じます。
「お外で食べるおにぎりは最高ピヨ!」
「フィッシュアーモンドも最高ぴよ〜!」
ぴもんくんが幸せそうにほおばっていると、ヒヨコくんが何かに気づきました。
「あれ? あそこに誰かいるピヨ!」
木のかげに、小さな茶色いモグラさんが座り込んでいます。
三兄弟が近づくと、ひよたくんがそっと声をかけました。
「こんにちは。何か困ってるピヨ?」
モグラさんは、ほっとしたように顔を上げました。
「実はぼく、目がよく見えないんだ。いつもと違う道を歩いていたら、帰り道がわからなくなっちゃって……」
「それは大変ピヨ! ボクたちが送っていくピヨ!」
ヒヨコくんは元気いっぱいに答えました。
「ボクについてくるピヨ!」
そう言って、モグラさんの手を引いて歩き始めます。
「こっちぴよ〜!」
ぴもんくんも張り切って先を歩きました。
ところが……。
「わっ!」
モグラさんが石につまずいてしまいました。
「あっ、ごめんピヨ! こっちなら大丈夫ピヨ!」
ヒヨコくんは慌てて別の道へ進みます。
けれど今度は、木の根っこに足を引っかけそうになりました。
「ちょ、ちょっと待って……!」
モグラさんの声に、三兄弟は足を止めました。
「ご、ごめんピヨ……」
ヒヨコくんはしょんぼり。
「ボク、助けたかったのに、怖い思いをさせちゃったピヨ……」
すると、モグラさんは優しく言いました。
「ありがとう。助けようとしてくれているのは、ちゃんと伝わっているよ。でもね、ぼくには道の様子がよくわからないから、急に引っ張られると怖いんだ」
「そうだったピヨね……」
ひよたくんは少し考えてから尋ねました。
「じゃあ、どうしたら安心して歩けるピヨかな?」
「そうだなぁ。まず、ぼくの横に立って、腕につかまらせてもらえると嬉しいな。それから、曲がり角や段差があるときは教えてほしいんだ」
「なるほどピヨ!」
ヒヨコくんは大きくうなずきました。
「ボク、ちゃんと聞かずに、勝手に引っ張っちゃったピヨ」
「今度は一緒に、ゆっくり歩こうピヨ」
ひよたくんが微笑むと、ぴもんくんも元気よく言いました。
「ボクも道をよく見ておくぴよ!」
こうして三兄弟は、もう一度歩き始めました。
今度はヒヨコくんがモグラさんの隣に立ち、腕につかまってもらいます。
「ここからまっすぐ進むピヨ。少し先で右に曲がるピヨ!」
「うん、ありがとう」
「もうすぐ木の根っこがあるよ。ちょっと足元に気をつけてピヨね」
ひよたくんも、周りの様子を優しく伝えます。
ぴもんくんは、少し先を歩きながら道を確かめていました。
「あっ! こっちの道には大きな水たまりがあるぴよ!」
「教えてくれてありがとう。じゃあ、別の道を通ろうか」
モグラさんがそう言うと、三兄弟は顔を見合わせました。
「うん! そうしようピヨ!」
さっきまで急いでいた足取りが、今はゆっくり、ゆっくり。
モグラさんの歩く速さに合わせて、みんなで森の小道を進んでいきます。
しばらくすると、モグラさんが嬉しそうに言いました。
「ふふっ。今度は安心して歩けるよ」
「ほんとピヨ!?」
「うん。どんな道なのかわかると、怖くないんだ。ありがとう!」
その言葉に、ヒヨコくんの顔がぱっと明るくなりました。
「よかったピヨ〜!」
やがて、夕日が森をオレンジ色に染め始めました。
「あっ、この辺り、なんだか覚えがあるよ!」
モグラさんが嬉しそうに声を上げます。
「もう少し先に、小さな小川があるんじゃないかな?」
「あるピヨ! 右の方からお水の音が聞こえるピヨ!」
「やっぱり! ぼくのおうちは、その小川の近くなんだ」
モグラさんの声が弾みました。
そして、木々の間に小さなおうちが見えてきました。
「着いたピヨ! モグラさんのおうちピヨ!」
「わぁ……! よかったピヨ。ちゃんと帰ってこられたピヨね」
モグラさんは、ほっとしたように笑いました。
「ほんとうにありがとう。君たちのおかげだよ」
「えへへ……最初は失敗しちゃったピヨ」
ヒヨコくんが照れくさそうに頭をかきました。
すると、モグラさんは優しく言いました。
「でもね、ぼくが嬉しかったのは、道を案内してくれたことだけじゃないんだ」
「えっ? そうなのピヨ?」
「うん。ぼくの話をちゃんと聞いて、どうしたらいいか一緒に考えてくれたこと。それが、いちばん嬉しかったんだよ」
三兄弟は顔を見合わせて、にっこり笑いました。
「当たり前ピヨ! だって、もうお友だちピヨ!」
「そうだぴよ! 今度は一緒におやつを食べたいぴよ〜!」
ぴもんくんは、おなかをぽんぽんとたたきました。
「フィッシュアーモンドパーティーするぴよ!」
「ふふっ、それは楽しみだなぁ!」
モグラさんが笑うと、ひよたくんも嬉しそうに言いました。
「ボク、今度は点字のことも知りたいピヨ!」
「いいよ! ぼくも少し読めるんだ。今度、一緒に触ってみようか」
「うん! 楽しみピヨ!」
ヒヨコくんも嬉しそうにぴょんと飛び跳ねました。
やがて、お別れの時間。
「じゃあ、またね!」
「また遊ぼうピヨ!」
三兄弟はモグラさんに手を振って、帰り道を歩き始めました。
てちてち、てちてち。
森の小道に、三兄弟の足音が響きます。
「ねぇ、ひよたくん」
「なあにピヨ、ヒヨコくん?」
「ボクたち、今日はモグラさんを助けたつもりだったけど……」
ヒヨコくんは少し考えてから、にっこり笑いました。
「モグラさんのおかげで、ボクたちも知らなかったことを教えてもらえたピヨ!」
「うんピヨ。お互いに知らないことを教え合えるって、素敵ピヨね」
ひよたくんが優しく答えました。
「それに、新しいお友だちもできたぴよ!」
ぴもんくんが嬉しそうに言うと、三兄弟は声をそろえて笑いました。
夕焼けの空の下。
三つの小さな背中が、仲良く並んで歩いていきます。
今日のピクニックは、思いがけない出来事でいっぱいだったけれど。
三兄弟の心には、おにぎりやおやつよりも、ずっとずっと大きなおみやげが残りました。
それは、新しいお友だちとの、あたたかな思い出。
「ねぇ、またモグラさんと遊びたいピヨ!」
「うん、今度はみんなでピクニックしようピヨ!」
「フィッシュアーモンド、いっぱい持っていくぴよ〜!」
三兄弟の楽しそうな笑い声が、夕暮れの森にいつまでも響いていました。
おしまい。
※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)
絵本のような、明るく温かい雰囲気のイラストです。
緑豊かな川辺で、ヒヨコ三兄弟と茶色いモグラさんがピクニックをしています。
左のヒヨコくんは赤いスカーフ、中央のぴもんくんは青い魚のポーチ、右のひよたくんはピンクの水玉模様のよだれかけをつけています。
真ん中には、丸くてふわふわしたモグラさんが座り、目を細めて幸せそうに笑っています。三兄弟もモグラさんを囲んで楽しそうです。
手前のレジャーシートには、おにぎりや小魚のおやつ、ジュースが並んでいます。
上部の木の看板には、**「ヒヨコ三兄弟と まいごのモグラさん」**と書かれています。🐥🌼

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