[ひよこものがたり]ことばのおくりもの第71話「ほんとうの色で、そばにいる」

ある日の午後。

アニマルランドの森は、やわらかな光に包まれていました。

ヒヨコくん、ぴもんくん、ひよたくんは、いつものように並んでおやつを食べながら、おしゃべりをしていました。

「ボクね、さっきピヨちゃんに『ボクはぜんぜん怖くないピヨ』って言ったピヨ」

ヒヨコくんは、ちょっと得意げに胸を張ります。

「でも……さっき雷なってたとき、ヒヨコくん、羽ぷるぷるしてたぴよ」

ぴもんくんが、フィッシュアーモンドをかじりながら、ぽつり。

ヒヨコくんは、はっとして、目をそらしました。

「……かっこよく見られたかったピヨ」

ひよたくんは、少し考えてから、やさしく言いました。

「それ、うそだけど、悪いうそじゃないと思うピヨ。怖いって言ったら、弱く見えちゃうって思ったんだよね」

ヒヨコくんは、小さくうなずきました。

「うんピヨ。ほんとは、こわかったピヨ」

しばらく沈黙が流れました。

すると、ひよたくんが、にこっと笑って言いました。

「でもね、見栄を張っちゃったことを、そのままにしなくてもいいピヨ。」

「どういうことピヨ?」

「『怖くない』って言ったなら、本当に少しずつ怖さに向き合えるように頑張ればいいピヨ。見栄でついたうそでも、そのうそに追いつこうと努力したら、それは未来の自分への約束になるピヨ。」

ヒヨコくんは、目をぱちぱちさせました。

「未来のボクへの約束……ピヨ?」

「そうピヨ。最初はうそだったことも、一生懸命頑張って本当にできるようになったら、もううそじゃなくなるピヨ。」

ヒヨコくんは、少し考えてから、照れくさそうに笑いました。

「じゃあボク、今度また雷が鳴ったら、少しだけでも逃げないで頑張ってみるピヨ!」

「その気持ちがあれば、きっと大丈夫ぴよ。」

ぴもんくんが、にっこり笑いました。

「ボクもあるぴよ。」

今度は、ぴもんくんが言いました。

「ほんとはもうお腹いっぱいなのに、『まだ食べられるぴよ』って言ったこと。」

三羽は、顔を見合わせて、くすっと笑いました。

「アニマルって、うそ、ついちゃうものだよねピヨ。」

ひよたくんが、空を見上げながら言います。

「強く見せたかったり、守りたかったり……。」

ヒヨコくんは、少し真剣な顔になりました。

「でもさ、だからって、信じるのをやめるのは、さみしいピヨ。」

ぴもんくんは、大きくうなずきます。

「うそを知ってても、信じたいって思える相手がいるの、大事ぴよ。」

そのとき、森を渡る風が、三羽の羽をやさしく揺らしました。

完璧じゃなくても、少し格好悪くても。

見栄を張ってしまうことがあっても、その見栄に追いつこうと一歩ずつ努力すること。

そして、それを見守ってくれる誰かがいること。

そんな毎日が、少しずつ本当の自分を育てていくのかもしれません。

三羽は、何も言わずに、そっと並び直しました。

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📝ことばのおくりもの

人は、うそをついてしまう。

それは、弱さでも、ずるさでもなく、

「大切にしたい何か」がある証かもしれません。

だからこそ、

うそを知ったうえで信じることは、

目を閉じることではなく、

相手ごと受け取ろうとする勇気。

信頼は、完璧な正直さの上ではなく、

不完全さを許し合う場所に、そっと育ちます。

※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)

イラストの説明(視覚障害者向け・簡潔)

森の中で、ヒヨコ三兄弟が花に囲まれて仲良くおやつを食べています。ヒヨコくんは赤いスカーフ、ぴもんくんは青い魚のポーチ、ひよたくんはピンクの水玉スタイを身につけ、穏やかに笑顔を向け合っています。頭上には青い小鳥が木の枝にとまり、「ほんとうの色で、そばにいる」というタイトルが大きく描かれた、あたたかく優しい雰囲気のイラストです。

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