[ひよこものがたり]第100話『ヒヨコ三兄弟とまいごのモグラさん』

ある晴れた日のこと。

ヒヨコ三兄弟――ヒヨコくん、ぴもんくん、ひよたくんは、森の中でピクニックを楽しんでいました。

おにぎりに、フィッシュアーモンド、冷たいジュース。

木漏れ日の下で食べるお弁当は、いつもよりおいしく感じます。

「お外で食べるおにぎりは最高ピヨ!」

「フィッシュアーモンドも最高ぴよ〜!」

ぴもんくんが幸せそうにほおばっていると、ヒヨコくんが何かに気づきました。

「あれ? あそこに誰かいるピヨ!」

木のかげに、小さな茶色いモグラさんが座り込んでいます。

三兄弟が近づくと、ひよたくんがそっと声をかけました。

「こんにちは。何か困ってるピヨ?」

モグラさんは、ほっとしたように顔を上げました。

「実はぼく、目がよく見えないんだ。いつもと違う道を歩いていたら、帰り道がわからなくなっちゃって……」

「それは大変ピヨ! ボクたちが送っていくピヨ!」

ヒヨコくんは元気いっぱいに答えました。

「ボクについてくるピヨ!」

そう言って、モグラさんの手を引いて歩き始めます。

「こっちぴよ〜!」

ぴもんくんも張り切って先を歩きました。

ところが……。

「わっ!」

モグラさんが石につまずいてしまいました。

「あっ、ごめんピヨ! こっちなら大丈夫ピヨ!」

ヒヨコくんは慌てて別の道へ進みます。

けれど今度は、木の根っこに足を引っかけそうになりました。

「ちょ、ちょっと待って……!」

モグラさんの声に、三兄弟は足を止めました。

「ご、ごめんピヨ……」

ヒヨコくんはしょんぼり。

「ボク、助けたかったのに、怖い思いをさせちゃったピヨ……」

すると、モグラさんは優しく言いました。

「ありがとう。助けようとしてくれているのは、ちゃんと伝わっているよ。でもね、ぼくには道の様子がよくわからないから、急に引っ張られると怖いんだ」

「そうだったピヨね……」

ひよたくんは少し考えてから尋ねました。

「じゃあ、どうしたら安心して歩けるピヨかな?」

「そうだなぁ。まず、ぼくの横に立って、腕につかまらせてもらえると嬉しいな。それから、曲がり角や段差があるときは教えてほしいんだ」

「なるほどピヨ!」

ヒヨコくんは大きくうなずきました。

「ボク、ちゃんと聞かずに、勝手に引っ張っちゃったピヨ」

「今度は一緒に、ゆっくり歩こうピヨ」

ひよたくんが微笑むと、ぴもんくんも元気よく言いました。

「ボクも道をよく見ておくぴよ!」

こうして三兄弟は、もう一度歩き始めました。

今度はヒヨコくんがモグラさんの隣に立ち、腕につかまってもらいます。

「ここからまっすぐ進むピヨ。少し先で右に曲がるピヨ!」

「うん、ありがとう」

「もうすぐ木の根っこがあるよ。ちょっと足元に気をつけてピヨね」

ひよたくんも、周りの様子を優しく伝えます。

ぴもんくんは、少し先を歩きながら道を確かめていました。

「あっ! こっちの道には大きな水たまりがあるぴよ!」

「教えてくれてありがとう。じゃあ、別の道を通ろうか」

モグラさんがそう言うと、三兄弟は顔を見合わせました。

「うん! そうしようピヨ!」

さっきまで急いでいた足取りが、今はゆっくり、ゆっくり。

モグラさんの歩く速さに合わせて、みんなで森の小道を進んでいきます。

しばらくすると、モグラさんが嬉しそうに言いました。

「ふふっ。今度は安心して歩けるよ」

「ほんとピヨ!?」

「うん。どんな道なのかわかると、怖くないんだ。ありがとう!」

その言葉に、ヒヨコくんの顔がぱっと明るくなりました。

「よかったピヨ〜!」

やがて、夕日が森をオレンジ色に染め始めました。

「あっ、この辺り、なんだか覚えがあるよ!」

モグラさんが嬉しそうに声を上げます。

「もう少し先に、小さな小川があるんじゃないかな?」

「あるピヨ! 右の方からお水の音が聞こえるピヨ!」

「やっぱり! ぼくのおうちは、その小川の近くなんだ」

モグラさんの声が弾みました。

そして、木々の間に小さなおうちが見えてきました。

「着いたピヨ! モグラさんのおうちピヨ!」

「わぁ……! よかったピヨ。ちゃんと帰ってこられたピヨね」

モグラさんは、ほっとしたように笑いました。

「ほんとうにありがとう。君たちのおかげだよ」

「えへへ……最初は失敗しちゃったピヨ」

ヒヨコくんが照れくさそうに頭をかきました。

すると、モグラさんは優しく言いました。

「でもね、ぼくが嬉しかったのは、道を案内してくれたことだけじゃないんだ」

「えっ? そうなのピヨ?」

「うん。ぼくの話をちゃんと聞いて、どうしたらいいか一緒に考えてくれたこと。それが、いちばん嬉しかったんだよ」

三兄弟は顔を見合わせて、にっこり笑いました。

「当たり前ピヨ! だって、もうお友だちピヨ!」

「そうだぴよ! 今度は一緒におやつを食べたいぴよ〜!」

ぴもんくんは、おなかをぽんぽんとたたきました。

「フィッシュアーモンドパーティーするぴよ!」

「ふふっ、それは楽しみだなぁ!」

モグラさんが笑うと、ひよたくんも嬉しそうに言いました。

「ボク、今度は点字のことも知りたいピヨ!」

「いいよ! ぼくも少し読めるんだ。今度、一緒に触ってみようか」

「うん! 楽しみピヨ!」

ヒヨコくんも嬉しそうにぴょんと飛び跳ねました。

やがて、お別れの時間。

「じゃあ、またね!」

「また遊ぼうピヨ!」

三兄弟はモグラさんに手を振って、帰り道を歩き始めました。

てちてち、てちてち。

森の小道に、三兄弟の足音が響きます。

「ねぇ、ひよたくん」

「なあにピヨ、ヒヨコくん?」

「ボクたち、今日はモグラさんを助けたつもりだったけど……」

ヒヨコくんは少し考えてから、にっこり笑いました。

「モグラさんのおかげで、ボクたちも知らなかったことを教えてもらえたピヨ!」

「うんピヨ。お互いに知らないことを教え合えるって、素敵ピヨね」

ひよたくんが優しく答えました。

「それに、新しいお友だちもできたぴよ!」

ぴもんくんが嬉しそうに言うと、三兄弟は声をそろえて笑いました。

夕焼けの空の下。

三つの小さな背中が、仲良く並んで歩いていきます。

今日のピクニックは、思いがけない出来事でいっぱいだったけれど。

三兄弟の心には、おにぎりやおやつよりも、ずっとずっと大きなおみやげが残りました。

それは、新しいお友だちとの、あたたかな思い出。

「ねぇ、またモグラさんと遊びたいピヨ!」

「うん、今度はみんなでピクニックしようピヨ!」

「フィッシュアーモンド、いっぱい持っていくぴよ〜!」

三兄弟の楽しそうな笑い声が、夕暮れの森にいつまでも響いていました。

おしまい。


※アイキャッチの説明(視覚障害者用代替テキスト)

絵本のような、明るく温かい雰囲気のイラストです。

緑豊かな川辺で、ヒヨコ三兄弟と茶色いモグラさんがピクニックをしています。

左のヒヨコくんは赤いスカーフ、中央のぴもんくんは青い魚のポーチ、右のひよたくんはピンクの水玉模様のよだれかけをつけています。

真ん中には、丸くてふわふわしたモグラさんが座り、目を細めて幸せそうに笑っています。三兄弟もモグラさんを囲んで楽しそうです。

手前のレジャーシートには、おにぎりや小魚のおやつ、ジュースが並んでいます。

上部の木の看板には、**「ヒヨコ三兄弟と まいごのモグラさん」**と書かれています。🐥🌼

Tags:

Comments are closed