ある日の夕暮れ、ヒヨコ三兄弟は庭のブランコに並んで座っていました。
空はオレンジ色に染まり、風は心地よく頬をなでています。
「ねぇ、ひよたくん」ヒヨコくんがぽつりとつぶやきました。
「この間のケガ、もう治ったピヨ?」
ひよたくんは、自分の足に巻かれた小さな絆創膏を見て、にこっと笑いました。
「うん、だいぶ良くなったピヨ。でも、ちょっと怖いピヨ。もう一回転んだらどうしようって…」
ぴもんくんが首をかしげて言いました。
「じゃあ、無理に走らなくてもいいピヨ。ここでのんびりしてるのも楽しいピヨ」
けれど、その言葉を聞いたひよたくんの表情は少し曇りました。
「うん…でも、本当はまたみんなと全力で走りたいピヨ。怖さは残ってるけど、このまま座っているだけじゃ、ずっと進めない気がするんだピヨ」
ヒヨコくんは目を輝かせて立ち上がりました。
「だったら一緒に走ろうピヨ!最初はゆっくりでいいんだ。当たり前ピヨ!」
ひよたくんは小さく息を吸い込み、立ち上がりました。
まだ少し足はぎこちなかったけれど、二人の横でぴもんくんが笑顔で声をかけました。
「じゃあボクが間に入って走るピヨ!ひよたくんが転んでも、ボクがすぐ支えるピヨ!」
三羽は並んで駆け出しました。
最初はぎこちなくても、風を切る感覚が少しずつ心を軽くしていきました。
夕陽の下、笑い声が空に響きます。
癒しは大切。けれど、それは未来へ進むための助走。
ひよたくんは走りながら、ようやくそのことに気づいたのです。
📝ことばのおくりもの
癒しは「終わり」ではなく、「はじまり」の準備。
心を休めたら、少しずつでいいから未来へ足を運ぼう。
その一歩が、次の景色を見せてくれるから。
