ある日のこと。
ヒヨコ三兄弟は、森の中を探検していました。すると、宝箱のような形をしたミミックくんが、木の根元で何やら深いため息をついていました。
「どうしたピヨ?」とひよたくんが声をかけます。
「実はね……誰かがボクの宝物を奪っていってしまったんだ。お金やきれいな石をいっぱい入れておいたのに、空っぽになってしまったんだ。」
ミミックくんはしょんぼり。
ヒヨコくんは胸を張って言いました。
「大丈夫ピヨ!また宝物を探しに行けばいいんだピヨ!」
けれど、ぴもんくんは首をかしげます。
「でも、宝物を見つけても、また誰かに奪われたらどうするピヨ?」
その言葉に、ミミックくんはますます悲しい顔になりました。
すると、ひよたくんがやさしく微笑みました。
「ねえ、宝物って、お金やきれいな石だけじゃないと思うピヨ。ボクたちが教えてあげられることだって宝物になるピヨ」
「教えてあげる?」とミミックくんは首をかしげます。
「うん。たとえば、お金をどう大切に使うかとか、自分で集めたものをどう守るかとか……そういう知恵は、奪われないピヨ」
ヒヨコくんも元気よくうなずきます。
「そうピヨ!学んだことは心の中にずっと残るピヨ!」
ミミックくんの目が少し輝きました。
「なるほど……奪われない宝物は“知恵”や“学び”なんだね」
その日から、ミミックくんはヒヨコ三兄弟にいろんなことを教わりながら、自分の力で森の実を集めたり、工夫して暮らすようになりました。宝箱の中には、少しずつ新しい宝物が増えていきました。
でも何よりも、ミミックくんの心そのものが満たされていったのです。
📝ことばのおくりもの
奪った財産は、一時の安らぎにしかなりません。
けれど、誰かから授かった学びや知恵は、心を支え続け、やがて自らを満たす力になります。
ほんとうの豊かさとは、奪うことで得られるものではなく、学び続ける心から育まれるのです。

