ある日の夜、ヒヨコママは、窓の外を見つめながら、ゆっくりとお茶を飲んでいました。
空には星がまたたき、森の奥では虫たちの声が響いています。
そのころ、ヒヨコ三兄弟は部屋の中でワイワイ。
ヒヨコくんは冒険の本を広げて、「ボク、大きくなったら世界を旅するピヨ!」と元気いっぱい。
ぴもんくんは、おいしいお菓子の絵を描きながら、「ボクはね、お菓子屋さんになるピヨ〜!」とほっこり。
ひよたくんは二人を見て、「どんな夢でも、ボク、応援するピヨ」とにっこり笑いました。
その声を聞きながら、ヒヨコママはそっと胸の前で羽を組みました。
――どうか、この子たちが悲しみに沈む日がありませんように。
――どうか、苦しみや孤独に押しつぶされることがありませんように。
ママは知っていました。
人生は、いつも楽しいことばかりじゃないということを。
夢や希望を持つことは素晴らしいけれど、それ以上に、「傷つかずに生きていけること」が、どれほど尊いかを。
夜がふけ、三兄弟がすやすやと眠るころ、ママはそっと毛布をかけて言いました。
「幸せになってほしいなんて、きっとどの親も思うわ。
でもね……それよりも、悲しみや不運が、あなたたちに降りかからないことを、私はいちばんに願うの。」
月明かりがやさしく差し込み、三つの小さな羽を照らしました。
ヒヨコママの祈りは、静かに夜空へと溶けていきました。
📝ことばのおくりもの
親の願いは、子が「幸せになること」よりも、「不幸にならないこと」。
それは、幸せは自分でつかめるけれど、不運だけは防いでやりたいという、親の深い愛のかたち。
やさしい羽の陰には、いつも静かな祈りがあるのです。
