[ひよこものがたり]ことばのおくりもの第69話「だいじな声は、ボクの中にあるピヨ」

森のはずれ、夕焼け色の空の下。

ヒヨコ三兄弟は、川べりのあたたかい石の上に、ぴとっと並んで座っていました。

「ボク、大きくなったら空みたいに広いところを旅するピヨ!」

ヒヨコくんは、短い羽を一生懸命のばして、えいっと跳ねます。

「ボクはね、おなかいっぱいになるごはんを、みんなに作るピヨ」

ぴもんくんは、にこにこしながらおなかをさすりました。

「ボクは…みんなが安心して帰ってこられる場所を作りたいピヨ」

ひよたくんは、スタイをちょんと押さえて、静かに言いました。

その少し後ろで、同じように石に座っていたのがチュン兄ちゃんでした。

体は少しだけ大きいけれど、羽も声も、れっきとしたヒヨコです。

「みんなの話、いいなぁピヨ」

チュン兄ちゃんは、照れたようにほっぺをぽりぽりかきました。

「ボクもね、昔はやりたいこと、いっぱいあったピヨ」

三兄弟が、くるっと振り返ります。

「でも、大きくなるにつれてね、

“それはやめたほうがいいピヨ”とか

“普通はこうするピヨ”って言葉が、

いつのまにか羽に絡まってきたピヨ」

チュン兄ちゃんは、自分の羽をぎゅっと抱きしめました。

「最初は細い糸みたいなのに、

気づいたら動きにくくなってて、

“失敗しない道”ばかり選ぶようになっちゃったピヨ」

「それ…こわいピヨ」

ひよたくんが小さくつぶやきます。

「うん、ちょっとこわいピヨ」

チュン兄ちゃんはうなずきました。

「だからね、ボクはみんなに、

そんなふうになってほしくないピヨ」

ヒヨコくんは、真剣な顔で聞いています。

ぴもんくんも、いつもより静かです。

「誰かの価値観で生きるとね、

自分の“好き”が、どこかへ行っちゃうピヨ。

でも、自分で選んだ道なら、

転んでも“ボクが決めた”って胸を張れるピヨ」

夕焼けの光が、ヒヨコたちのほっぺをやさしく染めます。

「夢はね、すぐ叶わなくてもいいピヨ」

チュン兄ちゃんは、三兄弟と同じ目線で、ちょこんと座り直しました。

「小さくても、忘れなければ、

ちゃんと羽の中で育つピヨ」

三兄弟は、ぎゅっと胸を張りました。

まだ小さな羽だけれど、

自分の心を信じようとする力が、確かにそこにありました。

📝ことばのおくりもの

大人になるって、

夢をしまうことじゃありません。

夢を「自分のもの」として

抱え続ける強さを持つことです。

世の中の常識や誰かの声が

正しく聞こえる日もあります。

でも、最後に道を選ぶのは、あなた。

自分の心が「これが好き」と言ったなら、

その声を大切にしてあげてください。

それは、あなたにしか守れない宝物です。

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