ヒヨコくんは、500円玉が大好きなヒヨコ三兄弟の長男。光る丸いコインをいつも大切に小脇に抱えて、「ボクの宝物ピヨ!」と嬉しそうにしています。
ある日、ヒヨコママが言いました。「ヒヨコくん、今日はお買い物のお手伝いをしてくれない?」
「いいピヨ! ボク、お手伝いも大好きピヨ!」
ヒヨコくんはやる気満々。ヒヨコママから500円玉を1枚もらい、スーパーで野菜や果物を買うことになりました。
スーパーに着いたヒヨコくんは、大好きな500円玉をしっかり握りしめながら野菜コーナーを歩きます。ところが、目に飛び込んできたのはお菓子コーナーに並ぶ色とりどりのスイーツ!
「うわぁ……これも欲しいピヨ! あ、こっちのチョコも!」
ヒヨコくんはテンションが上がり、カゴにお菓子をどんどん入れていきました。
「でも……500円玉1枚で全部買えるピヨ?」
レジでお金を払う時に、ヒヨコくんは心配そうに尋ねました。
店員さんが笑顔で答えます。「お菓子の合計は800円だから、500円では足りないね。」
「えっ……足りないピヨ?」
初めてお買い物で、お金が足りない経験をしたヒヨコくんは、目を丸くして驚きました。
家に帰ると、ヒヨコママが優しく言いました。「ヒヨコくん、お金って使うと減ってしまうのよ。そして、お金を手に入れるのも簡単なことじゃないの。」
「どういうことピヨ?」
「例えば、パパはお仕事をして頑張ってお金を稼いでいるわ。でも、そのお金も大事な物を買うために使っていると、だんだん無くなっていくの。」
「ふーん……」とヒヨコくんは考え込む様子。「じゃあ、ボクの500円玉も、何かに使ったら無くなっちゃうピヨ?」
「そうね。でも、その代わりに必要な物が手に入るのよ。」
その後、ヒヨコママと一緒にお財布を見ながらお話をしていると、ぴもんくんがキッチンから戻ってきました。
「ねぇ、ヒヨコくん。このフィッシュアーモンド、1袋100円だったピヨ! 安いと思わないピヨ?」
「確かに安いピヨ! でも、このフィッシュアーモンドの袋が500円だったら、もっとおいしいピヨ?」
「それはちがうと思うピヨ!」とひよたくんが言います。「高いからって、それでおいしさが変わるわけじゃないピヨ! おいしいものは、お値段じゃなくて、おいしいからおいしいピヨ!」
「じゃあ……物の価値ってどう決まるピヨ?」とヒヨコくんが首をかしげました。
ヒヨコママが答えます。「それはね、物の価値は人それぞれ違うのよ。ヒヨコくんにとっての500円玉が特別なのと同じように、他の人にとっても大切な物があるの。」
次の日、ヒヨコくんは自分の500円玉を眺めながら考えました。
「ボクの500円玉、使っちゃうのはちょっと悲しいピヨ……でも、大切な物を手に入れるためならいいピヨね!」
そして、その500円玉でぴもんくんとひよたくんにお菓子を買ってきました。
「これはボクのおごりピヨ! 仲良く分けて食べるピヨ!」
「ありがとうピヨ!」と兄弟たちは大喜び。
こうしてヒヨコくんは、お金を使うことで家族や仲間が笑顔になることの大切さを学びました。
「お金って不思議ピヨ……使うと無くなるけど、代わりにもっと大切な物が手に入るピヨね!」
ヒヨコくんの500円玉への愛はそのままに、少しだけお金の大切さを知ることができたのでした。
※タイトルのイラストには、500円玉を両手で持って考え込んでいるヒヨコくんが描かれています。