[ひよこものがたり]言葉の贈り物編第5話「しあわせのおすそわけ」

ひよこものがたり

ある日の午後、ヒヨコ三兄弟は庭でおやつの時間を楽しんでいました。

テーブルの上には、ヒヨコママが焼いてくれたクッキーが山盛り。

「わーい!ボクがいちばんたくさん食べるピヨ!」とヒヨコくんは胸を張りました。

ぴもんくんもにこにこしながらクッキーを抱えこみ、

「これはボクの分ピヨ、だれにもあげないピヨ~」と夢中で食べています。

ひよたくんは二人を見て、少し考えました。

「でも…ベルちゃんやエルちゃんも、もし一緒に食べられたら喜ぶんじゃないかなピヨ?」

しかしヒヨコくんは「今はボクたちだけで楽しむピヨ!」と首を振り、

ぴもんくんも「お腹いっぱいになるまで独り占めピヨ!」と同意しました。

ところが、しばらくすると、山盛りだったクッキーはあっという間になくなってしまいました。

テーブルには食べかすだけが残り、三兄弟はお腹は満たされたけれど、なんだか胸の中がぽっかりと空いたような気持ちになりました。

そのとき、庭の門の外からベルちゃんとエルちゃんの声がしました。

「クッキーのいい匂いがしたけど…もう終わっちゃったかな?」

ヒヨコくんとぴもんくんは顔を見合わせて、胸がチクンとしました。

「ボクたち…自分の幸せだけを考えて、ふたりのことを思いやらなかったピヨ」

すると、ひよたくんが立ち上がって言いました。

「もう一度ママにお願いして、一緒に作ろうピヨ!今度はみんなで分け合って食べるんだピヨ!」

ママもにっこり笑って手伝ってくれ、ベルちゃんとエルちゃんも混ざって、にぎやかにクッキーを焼き直しました。

できあがったクッキーは前よりもおいしく感じて、みんなの笑顔で庭はあたたかい空気に包まれました。

ヒヨコくんは小さな声でつぶやきました。

「やっぱり、みんなの幸せがあると、自分の幸せももっと大きくなるピヨね」

ことばのおくりもの

周りの幸せを願わない幸せは、やがて孤独に変わります。

けれど、誰かの幸せを願う心を持てば、あなたの幸せは広がり、

もっと強く、もっとあたたかく、消えない光になります。

こめ

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