ある日の午後。
ヒヨコ三兄弟は、森の広場でお友達と一緒にあそんでいました。
ひよたくんは木の枝で絵を描き、ぴもんくんはおやつを配り、ヒヨコくんはみんなをまとめてゲームを考えていました。
「じゃあ、鬼ごっこするピヨ! みんな、逃げてピヨ〜!」
ヒヨコくんの声に、みんなが元気よく走り出しました。
でも──
ぴもんくんが転んだとき、ヒヨコくんは夢中で追いかけていて気づきません。
ぴもんくんは少しすりむいて、ひよたくんがあわててかけよります。
「ヒヨコくん……ぴもんくん、ちょっと痛そうだよピヨ。」
けれど、ヒヨコくんは痛そうな様子に気づかず笑っています。
「大丈夫ピヨ! ぴもんくん、強いピヨ!」
ひよたくんの胸の中に、もやもやが広がりました。
(言ったほうがいいのかな……でも、せっかく楽しんでるのに気まずくなったらイヤだピヨ……)
だけど、ぴもんくんがうつむいたまま、おやつを見つめているのを見て、ひよたくんは小さく息を吸いました。
「ヒヨコくん、ちょっといいピヨ? ボク、言いにくいんだけど……」
「ん? なにピヨ?」
「ぴもんくん、けがしてるのに……“大丈夫”って言うのはちょっと違うと思うピヨ。
ヒヨコくんは優しいから、気づいてあげてほしいピヨ。」
ヒヨコくんははっとして、ぴもんくんを見ました。
「ごめんピヨ! 気づかなかったピヨ!」
ぴもんくんはにっこり笑って、「平気だピヨよ。ありがとピヨ、ひよたくん」と言いました。
そのあと、ヒヨコくんはぴもんくんの手を取り、いっしょに家まで歩きました。
広場にはあたたかい風が吹き、ひよたくんの心にもやさしい光がさしました。
──言いにくいことを言うのは、勇気がいる。
でも、それは誰かを想う気持ちの、いちばん深いかたちなのです。
📝 ことばのおくりもの
本当の優しさは、沈黙の中にはありません。
ときに、言いにくい言葉を伝えることが、いちばんの思いやりになります。
相手を傷つけないように選んだ「ひとことの勇気」が、
やがて信頼を育て、絆を強くしてくれるのです。
