[ひよこものがたり]言葉の贈り物編第13話「とじたドアのむこう」

ひよこものがたり

ある日の午後、ヒヨコ三兄弟はお庭で遊んでいました。

ヒヨコくんが「みんなでかけっこ競争しようピヨ!」と元気いっぱいに言いました。

ぴもんくんは「いいね~!でも走ったあとにおやつも食べたいピヨ!」とお腹をさすりながら笑い、

ひよたくんは「走る前にちゃんとルールを決めようピヨ」と少し真面目に言いました。

ところが、遊びの最中にちょっとしたことで言い合いになってしまいました。

ゴールの位置をどこにするかで、ヒヨコくんとひよたくんの意見がぶつかったのです。

「ここがゴールでいいピヨ!」とヒヨコくんは勝手に決めて走り出し、

「ちゃんと話し合わないとダメだよピヨ!」とひよたくんは後ろから声を張り上げました。

その声にヒヨコくんは振り返り、

「ひよたくんはいつも細かいことばっかり言うピヨ!」と強く言ってしまいました。

その言葉にひよたくんの胸はチクリと痛み、涙がこぼれそうになりました。

「そんなこと言うなんてもう知らないピヨ!」

その瞬間、ふたりの間に目に見えない大きな扉がバタンと閉じてしまったようでした。

遊びは止まり、ぴもんくんもどうしたらよいか分からず、ただ心配そうにふたりを見つめました。

その日の夜、ひよたくんはベッドに入りながら考えていました。

「どうしてボクはあんなに怒ってしまったんだろう。でも、このまま何も言わなかったら、ヒヨコくんと仲良しじゃなくなっちゃうかもピヨ。」

胸の中は不安でいっぱいになりました。

一方、ヒヨコくんも布団の中でゴロゴロと寝返りを打ちながら考えていました。

「ボク、言いすぎたピヨ。でも先に謝るのはちょっと悔しいピヨ。」

けれども心の奥では「ひよたくんと一緒に遊べないのはやっぱりさみしいピヨ」と思っていました。

翌朝、まだ太陽が昇りきらない時間に、ひよたくんは勇気を出しました。

「昨日はごめんねピヨ。ボクも言いすぎたピヨ。」

その言葉にヒヨコくんはびっくりしました。

しばらく黙っていましたが、やがて小さな声で言いました。

「ボクこそ、ごめんピヨ。仲直りしたいピヨ。」

その瞬間、ふたりの間に閉じていた扉がギィ…”と音を立てて開いたように感じました。

そこへ、ずっと気をもんでいたぴもんくんがニコニコ顔で飛び込んできました。

「やっと仲直りできたピヨ!みんなでポカポカのパンケーキ食べようピヨ!」

三兄弟は笑顔を取り戻し、昨日よりもっと強い絆でつながれたように感じました。

ことばのおくりもの

人の心の扉は、一度強く閉ざしてしまうと、向こうから勝手に開いてくれることはありません。

その扉を開けるには、自らの手でノックし、歩み寄る勇気が必要です。

小さな「ごめんね」や「ありがとう」が、閉じた扉をゆっくりと開いてくれます。

その一歩を恐れずに踏み出せば、未来の幸福の芽はきっと大きく育ち、

あなたの心に優しい花を咲かせてくれるでしょう。

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