[ひよこものがたり]言葉の贈り物編第2話「ちいさな誤解、大きなすれちがい」

ひよこものがたり

ある日の午後

ヒヨコ三兄弟は、庭で大きな砂山をつくっていました。

「ここをトンネルにしたらかっこいいピヨ」とひよたくん。

「ボクは旗を立てるピヨ!」とヒヨコくん。

「ボクはお山の上でおやつを食べたいピヨ〜」とぴもんくん。

三羽はわいわいと、遊んでいました。

やがて、ヒヨコくんがいちばん大きな山を完成させて、胸を張りました。

「見てピヨ!ボクの砂山、世界一だピヨ!」

ぴもんくんはその山をじーっと見てから、のんびりと言いました。

「ほんとだ〜、すごいピヨ。でも、ちょっと形がくずれてるピヨ」

その言葉に、ヒヨコくんの心がチクッとしました。

「え……バカにしてるピヨ?せっかくがんばったのに……」

でも、ぴもんくんにはそんな気持ちはまったくありませんでした。

「ここを直したら、もっと立派になるのになぁ。お手伝いしようかな」と思っていただけだったのです。

けれど、ヒヨコくんはもやもやを言葉にせず、そのまま背中を向けてしまいました。

「もういいピヨ。ボクひとりで遊ぶピヨ!」

ぴもんくんはびっくり。

「なんで怒っちゃったのピヨ……?ボク、悪いこと言ったピヨ?」

困った顔をしながら、どうしていいかわからず黙ってしまいました。

――そこへ、ひよたくんがやってきました。

「二人とも、どうしたのピヨ?」

事情を聞いて、ひよたくんはすぐに気づきました。

「ヒヨコくん、ぴもんくんはバカにしたんじゃないピヨ。

もっと良くなるって思ったから言っただけなんだピヨ」

「えっ……そうなのピヨ?」

ヒヨコくんが振り向くと、ぴもんくんがうなずきました。

「そうだよピヨ。ボク、ヒヨコくんの砂山すごいと思ったんだピヨ。

だから、もっとかっこよくしようって言いたかっただけピヨ」

ヒヨコくんの顔は、ぱっと明るくなりました。

「……ボク、早とちりしちゃったピヨ。ごめんピヨ!」

「いいんだピヨ!ボクも言い方がわかりにくかったかもピヨ」

二羽は顔を見合わせ、にっこり笑いました。

そのあと三羽で力を合わせて砂山を直し、旗を立て、トンネルを通して……

とびきり立派なお城のような山が完成しました。

「やっぱりみんなで作ると最高ピヨ!」

「うん、楽しいピヨ!」

「ボク、おやつがもっと美味しく感じるピヨ〜!」

小さな誤解は、きちんと話し合ったおかげで、またすぐに笑顔に変わったのでした。

📝ことばのおくりもの

すれ違いの始まりは、ほんの小さな誤解から生まれます。

その誤解を「たいしたことない」と放っておくと、心と心のあいだに、少しずつ距離が広がってしまいます。

けれども、勇気を持って「どういう意味?」と聞いてみたり、

相手の思いを確かめ合ったりすれば、誤解はほどけ、心は近づくことができます。

すれ違いを放置するのではなく、

ちょっと立ち止まって、確かめる勇気を持ちましょう。

その小さな一歩が、大切な人との絆を守り、

「一緒に笑える時間」を、もっと長く続けてくれるのです。

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