[ひよこものがたり]言葉の贈り物編第3話「舵を握るのは自分」

ひよこものがたり

ある日の午後、森の小道をヒヨコ三兄弟は探検していました。

ひよたくんが地図を持ち、先頭を歩きます。スタイを揺らしながら、「こっちの道は暗くて不気味ピヨ…。何か出てきそうで怖いピヨ」と小さな声で言いました。

ヒヨコくんはというと、反対側にキラキラと光る小道を見つけて、「うわぁ! なんだか宝物の匂いがするピヨ! こっちに行けばきっと大冒険になるピヨ!」と目を輝かせました。

ぴもんくんはその場でお腹をさすりながら、「でもボク、おやつの時間に帰れなくなったら困るピヨ…」と心配そう。

それぞれの気持ちがバラバラで、三兄弟の足が止まってしまいました。

「ボク、怖いところは絶対いやピヨ!」とひよたくんは首を横に振ります。

「いやいや! 輝く道に行かないなんてもったいないピヨ!」とヒヨコくんは跳ね回ります。

お互い譲らず、ピヨピヨと声が大きくなっていきました。

そんなとき、ぴもんくんが深呼吸して、二人を見つめました。

「ねえ、どっちも少し違うんじゃないピヨ? 恐怖に任せて逃げちゃうのも、欲望に流されて飛びつくのも、自分で考えていないのと同じピヨ。大事なのは、ボクたち自身が本当に歩きたい道を選ぶことピヨ!」

二人はハッとしました。

恐怖は挑戦を止めさせ、欲望は目標をかすませる。どちらにも舵を渡したら、自分の進むべき道が見えなくなるのです。

ひよたくんは小さくうなずきました。

「たしかに、怖いから避けるだけじゃ、前に進めないピヨ」

ヒヨコくんも羽をぱたぱたさせて笑いました。

「欲しい欲しいって走り出しても、途中で転んじゃうかもしれないピヨ」

三兄弟は顔を見合わせました。

「じゃあ、みんなで真ん中の小道を行こうピヨ!」

森の真ん中に、小さくて穏やかな小道があったのです。そこには鳥の歌が響き、光が木漏れ日のように差し込んでいました。恐怖も欲望もない道で、一歩一歩を大切に進めるような、そんな道でした。

歩きながら、三兄弟は話し合います。

「恐怖も欲望も悪いものじゃないけど、そこに任せきりにしちゃだめピヨ」

「ボクたちが舵を握るからこそ、冒険は楽しいピヨ」

「そうだね。自分で選んだ道を一緒に歩けば、きっとどこにだって行けるピヨ」

三羽は胸を張り、羽を寄せ合って、森の奥へと歩いていきました。

ことばのおくりもの

恐怖は挑戦をやめさせ、欲望は目標を見失わせます。

けれど、そのどちらにも人生の舵を渡さなければ、自分の進みたい道を自分の手で選ぶことができます。

舵を握るのは、いつだってあなた自身です。

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