ある日の午後。
森の広場には、ヒヨコ三兄弟とピヨちゃん、ベルちゃんの笑い声がひびいていました。
みんなで遊具を順番に使いながら、元気いっぱいに走り回っていたのです。
ところが――。
「ボクが先にのろうと思ってたピヨ!」
「ちがうよ、ボクだって待ってたピヨ!」
ヒヨコくんとぴもんくんが、ブランコをめぐって言い合いになってしまいました。
二人の声はだんだん大きくなり、顔もむすっとこわばってきます。
その光景を見ていたひよたくんの胸に、ぽつんと影が落ちました。
――けんかしているのはお兄ちゃんたちなのに、ボクの心までどんよりしてきちゃうピヨ。
本当は楽しいはずの遊び時間なのに、ひよたくんは気がつけば、地面の小石ばかり見つめていました。
そんなひよたくんに、ピヨちゃんがちょこんと寄りそって小さな声で言いました。
「わたしもね、ふたりがけんかしてるのを見ると、胸がもやもやしちゃうピヨ。だけど、それはふたりの中で解決することだから、わたしたちまで全部を背負わなくてもいいんだよ」
ベルちゃんも、やさしい笑顔でうなずきました。
「けんかは、空に広がる雲みたいなもの。風が吹けば、必ず青空に戻るんだよ。だから、もやもやをずっと持ってなくてもいいんだよ」
ひよたくんは「そうか」と心が少しずつ軽くなるのを感じました。
そして、二人のけんかをただ見守りながら、静かに仲直りの風が吹くのを待つことにしました。
やがて、ヒヨコくんとぴもんくんが、目を見合わせて小さな声で言いました。
「ごめんピヨ」
「ボクも、ごめんピヨ」
その瞬間、ひよたくんの胸にかかっていた雲も、ぱあっと消えて、広場いっぱいに青空が広がるようでした。
📝ことばのおくりもの
友達のけんかは、自分の心まで暗くしてしまうことがあります。
でも、そのもやもやを無理に抱え込まなくてもいいのです。
けんかは、空を流れる雲のようなもの。
やがて風が吹き、きっと晴れていきます。
あなたはその空の下で、静かに優しく待つことができれば十分なのです。
