[ひよこものがたり]言葉の贈り物編第18話「ともだちのけんか、こころのもやもや」

ひよこものがたり

ある日の午後。

森の広場には、ヒヨコ三兄弟とピヨちゃん、ベルちゃんの笑い声がひびいていました。

みんなで遊具を順番に使いながら、元気いっぱいに走り回っていたのです。

ところが――。

「ボクが先にのろうと思ってたピヨ!」

「ちがうよ、ボクだって待ってたピヨ!」

ヒヨコくんとぴもんくんが、ブランコをめぐって言い合いになってしまいました。

二人の声はだんだん大きくなり、顔もむすっとこわばってきます。

その光景を見ていたひよたくんの胸に、ぽつんと影が落ちました。

――けんかしているのはお兄ちゃんたちなのに、ボクの心までどんよりしてきちゃうピヨ。

本当は楽しいはずの遊び時間なのに、ひよたくんは気がつけば、地面の小石ばかり見つめていました。

そんなひよたくんに、ピヨちゃんがちょこんと寄りそって小さな声で言いました。

「わたしもね、ふたりがけんかしてるのを見ると、胸がもやもやしちゃうピヨ。だけど、それはふたりの中で解決することだから、わたしたちまで全部を背負わなくてもいいんだよ」

ベルちゃんも、やさしい笑顔でうなずきました。

「けんかは、空に広がる雲みたいなもの。風が吹けば、必ず青空に戻るんだよ。だから、もやもやをずっと持ってなくてもいいんだよ」

ひよたくんは「そうか」と心が少しずつ軽くなるのを感じました。

そして、二人のけんかをただ見守りながら、静かに仲直りの風が吹くのを待つことにしました。

やがて、ヒヨコくんとぴもんくんが、目を見合わせて小さな声で言いました。

「ごめんピヨ」

「ボクも、ごめんピヨ」

その瞬間、ひよたくんの胸にかかっていた雲も、ぱあっと消えて、広場いっぱいに青空が広がるようでした。

📝ことばのおくりもの

友達のけんかは、自分の心まで暗くしてしまうことがあります。

でも、そのもやもやを無理に抱え込まなくてもいいのです。

けんかは、空を流れる雲のようなもの。

やがて風が吹き、きっと晴れていきます。

あなたはその空の下で、静かに優しく待つことができれば十分なのです。

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